複雑・ファジー小説
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.2 )
- 日時: 2014/06/24 16:02
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第2話
眩しい朝日が窓から漏れて台所を照らす。
朝食のフレンチトーストもいい具合に焼けている。
三角に切って中を確認。チーズとハムの具合も完璧。
そろそろあいつも来るころかな。
「お姉ちゃん!そろそろ朝ごはんだよ」
「うん。今お花にお水をあげているからちょっと待ってね?」
玄関の扉を開け、庭の花壇の前にいる姉、サクヤに呼びかけるとサクヤはホースを使って水を与えていた。それと共に隣の家からバタンと音を聞き、思わず表情が緩みそうになるがすぐに引き締めた。
「おはよー!」
元気に挨拶してきた彼女の名前はリーネ。
茶色の髪で肩まで延ばした毛先を外に跳ねさせ、頭に青いベレー帽。童顔で赤い瞳の色白。黒の長袖のジャケットを肘まで腕をまくり、膝よりやや上までの丈になっている茶色の短パンの上に青いマントを身に付けていた。
彼女は私の幼馴染で、隣に一人で住んでいるからよく私の家に遊びに来る。というよりご飯を食べに来る。
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「おはようリーネちゃん。」
「おはようサクヤお姉ちゃん!」
いつものようにお隣に遊びに行くと出迎えてくれたのは、黒くて長い髪と大きな青い瞳が印象的なお姉ちゃん。今日は白い上下一対のワンピースで出迎えてくれた。名前はサクヤ。
血がつながっていないけど独り身の私を本当の妹のように接してくれる2個上のお姉さん。
「あら?ちょうどよかった。朝食よ」
「あっ!カグヤちゃんおはよ〜」
「だから…ちゃんはやめなさい!」
手を振って玄関の前に向かってあいさつをすると、何故かため息をする様子と私は首を傾げてしまう。
サクヤお姉ちゃん同様の長い黒髪をポニーテールにして、やや釣り目気味な目つきなのは妹のカグヤちゃん。小さいころからの友達で私と同い年のしっかり者さん。
「じゃあリーネちゃんも来たからご飯にしようか?」
「うん!今日の朝食は何?」
「フレンチトーストよ。じゃあ二人とも手を洗ったら来るのよ。」
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朝食の用意に戻った様子のカグヤを見送り、手を洗うサクヤを見てから自分も手を洗おうとリーネは蛇口に近づくと、不意に花壇から見せた黒い物体に目線が向かった。
「どうしたのリーネちゃん?」
「えっと…あれ…」
リーネの言う方向を見るとそこにいたのは小さな黒い猫だった。
「あら?こんなところに珍しい?迷子さんかな?」
ゆっくりと歩みより猫を抱くサクヤの様子を見てからリーネもそっと歩み寄った。
「野良猫かな?普通は鈴が付いているのにね」
「うーん…ひとまずミルクをあげようかな。リーネちゃん。カグヤちゃんにお願いしてもらってきていい?」
「うん!まかせて!」
ドタドタと家に駆け込んでいく様子、続くように「うるさい!」というカグヤの声にサクヤは小さく微笑み視線を黒猫に向けた。赤い瞳を持つ猫を見てサクヤは昨晩の青年を思い出していた。
(あの人も…こんな瞳だったなぁ)
鋭く、睨まれたら怖くて動けなくなりそうな顔立ち。だけどその瞳だけは何故か悲しそう。
それがサクヤの感じた青年に対する印象だった。
「お姉ちゃん!用意できたよ!」
中から聞こえたカグヤの声で我に返り、首を振って思考を現実に戻し、猫を抱いたまま家に戻った。