複雑・ファジー小説

ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.23 )
日時: 2014/06/26 12:08
名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)

第8話

「これで5体目!」

足に魔力を集中させローラーブレードが蒼く光ると共にゴーレムの頭を横殴りに蹴り飛ばし、倒れた時には起動を意味する目から光が消えた。

「こっちも5体目が完了だ。」

少し離れた位置からフランの声が聞こえたことで私は視線を向けた。
フランはどこに隠していたのか長さはフラン自身より長そうな槍を片手に持ちゴーレム5体の内二体は真二つにされており、残りは地面から生えた巨大な槍で串刺しになっていた。

「合計10体…でもまったく減っていないじゃない!」
「どこか…これらを操る中枢を探すしかないな。」

フランの声を聞きながら私はサブマシンガンを連射して牽制を繰り返しゴーレムとの距離を取った。
ざっと目視で確認しただけでもまだ10体は残っていそうで、このままのペースだとまだ時間がかかりそう。
そんな中で壁に埋め込まれていた丸く青いコアが見え、その下に魔法陣が描かれると同時にゴーレムが召喚されていた。

「フラン!あれ!コアみたいよ!」
「ならゴーレムを足止めする!その間にコアを破壊しろ!」

私に指示を出すなりフランは何かしらの詠唱を始め、足元に見たことがない魔法陣が浮かび上がるとゆっくりと地面に手を当てた。
同時にフランから魔力が消えた。

「錬金術?なら…」

私は魔力が感じられなくなった瞬間にローラーブレードに魔力を込めて、そのままコアにだけ視線を集中させ走らせた。
同時に各ゴーレム達の足元から、巨大な槍が伸びてゴーレム達を貫いて身動きを封じた。

「よし!いけ!」
「あんたに言われなくてもできるわよ!」

フランの声に適当に答えると同時にコアに向い魔力でブーストした渾身の蹴りを入れ、それによりコアにひびが入ると周りにいるゴーレム達は光に包まれ消えてしまった。

「面倒な奴だったけど何とかなったわね…」

私は息をついてそのまま床に座り込み、フランも多少呼吸を乱しながら立ち上がった。

前に聞いたけど錬金術を発動させている間は魔力が0になり、その間は例えるなら重りを付けて水に沈むような、呼吸が出来ないままどこかに沈んでしまうような感覚らしい。
そのため一瞬ならまだしも、大量の練成には体への負担もそれなりになると言っていた。

「ずいぶん辛そうじゃない?おぶってあげた方がいい?」
「な…何を言っているんだ!」
「冗談よ。それよりこの防衛システムずいぶん性能がいいわね。未だに機能するなんて驚いたわ」
「いや…これは…」

ゆっくりとひびが入ったコアに近づいたフランは、私が隣にいるにもかかわらず真剣な表情でコアを見つめた。
余程重要な発見みたいだった。

「周りに比べて新しい…本当につい最近取り付けられたものだ。」
「じゃあやっぱり私達より早く侵入した奴がいるわけ?」
「先を急ごう…皆が心配……だ…からな…」

すぐ隣に私がいたのが分かったみたいでフランは話す途中でカチカチに固まって少しずつ距離を取って行った。

さすがにこれは傷つく場面かしら…

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「また変なコアがあるぞ…」
「近づかなければ平気です…いま破壊します…」

遺跡の地下で見つけた指輪を調査の資料のため回収し先を進んだ俺とシンだが、あまりに罠が多く順調にとは言い難いペースで先を進んだ。
現に今見えているコアも近づくと熱線で攻撃してくる。
耐久力はそんなにないからシンのライフルで見つけるたびに破壊して進んでいた。
シンはライフルをコアに向けてジッと構えた。
多少の手ぶれがあるように見えたが一瞬その動きが消えたと思うと同時に僅かな発砲音と共にコアを破壊した。

「ふう…これでもう何個目だよ…」
「少なくても7個は見ましたね」

ライフルに銃弾を込めながら答えるシンを横目に俺は他に罠のようなものがないかと辺りを見回した。
辺りはまだ薄暗かったが柱などの隠れるスペース等があるおかげで安全を確保しながら進めた。

「それにしても広すぎだろ…いつになったら出られるんだ…」
「マッピングは大分進みましたから…この先も行き止まりになると詰みですね」
「そうなるともう出られないのかよ…」
「バードさんと心中では死んでも死にきれませんね…」
「どういう意味だ!」

シンの銃の用意を済ませ再び歩き始めた俺たちは、慎重に物陰に隠れて安全を確認しながら進んでいった。そんな中4つのコアと光が差している階段を見つけた。

「あそこは…上に上がる階段じゃないか?」
「そうみたいですね…コアが4つ…二つはいけますがそうなると残りの2つが襲ってきますね…」

今回のシンが持っている銃は2発撃つごとに弾込めが必要なもので、2つ破壊できたとしてもそれに反応して残りの2つが攻撃をしてくるのが厄介だった。

「何とか俺が残りを叩くか。二つは頼むぞ…」
「多分一撃でも重傷ですから気を付けてください…一発撃ったら後はバードさんが取り漏らしたコアを狙いますね」
「分かった。いきなり外すなよ?」
「誰に言っているんですか?」

シンの発砲とともに俺は柱から飛びだした。
今回は小回りが利く帯剣を腰から抜いた。シンの銃弾は俺の位置から一番狙いにくかった位置のコアを撃ち抜いた。
同時に3つの青いコアが光り始め一つを両断してすぐに腰に納めた銃で撃ち抜いて破壊した。

「これで3つか!」
「次で終わりです…」

最後の一つのコアが遅れて攻撃をしようとした瞬間に今度はシンの2発目のライフルで撃ち抜いた。
その瞬間辺りからコアの光が消え階段から差す光のみになった。

「ようやく抜けたな…」
「急ぎましょう…他の皆さんから離れてずいぶん経ちました」
「そうだな。さっさと…!」

シンに視線を向けた瞬間その後ろで光る青いコアが目に入った。
咄嗟に俺はシンに飛び込んで、シンも俺の異常に気付いたのか視線を後ろに向けた。
しかし銃を撃ち切って対処できないでいる様子で、庇う形でシンを押し倒してギリギリでシンを射線上から離せた。
同時に背中に熱い感覚を感じた。

「バードさん!」

シンの声が聞こえたが答えることが出来なかった。
まともに攻撃を受けたようで意識が飛びそうになった。
不意に俺の腰に入れた銃が抜き取られたのが分かった。同時にシンがそれを使ってコアを破壊した。

「バードさん!無茶しすぎですよ!」
「お前にあんなのが当たったら死ぬだろ…」
「少し休憩していきましょう」
「何言っているんだよ…早く合流して…」
「バードさんを置いていけませんよ」

強情な奴だと考えながら俺は仰向けに横になってその横に座ったシンは銃に弾を込めて隣に座り込んだ。

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「思ったよりやるね。私と対峙してまともにやりあえる人は久しぶり!」
「一応お師匠様に鍛えられてきたからね…」

リーネは息を乱し、杖を構えたまま答えキルには制止の命令を与えていた。
恐らくキルが飛びかかった場合、白騎士は躊躇なく両断するだろうとリーネは分かっていた。
その状況をキルも分かっているのかおとなしく指示に従っていた。

「優秀なお師匠様みたいね。私も会ってみたいわ」

楽しそうに白騎士は剣をクルクルと回して話していくが、少しでも油断すると懐に飛び込まれるのは初対面で体験しておりリーネは神経を研ぎ澄ませていた。

そのおかげで致命傷になるダメージ自体は受けていなかったが少しずつ体も神経もボロボロになっていた。

「でも…そろそろ終わりにしようか?」
「えっ…」

リーネが気付いた時には白騎士は目の前にいた。
それを認識した時リーネは腹部に衝撃と共に痛みを感じた。
白騎士が腹部に肘打ちをしたことが分かったのはそのまま地面に倒れた時だった。

「ごめんね?少し手を抜いていたの。力の加減間違えて殺したらいけないからね」
「うう…げほ…な…何で…私を…」

腹部に手を当て倒れたままリーネは白騎士に視線を向けた。
白騎士は相変わらず楽しそうに笑いリーネを見下ろしていた。

「それは後で分かるわ。さあて…連れて行かないとね」

白騎士が話した瞬間、白騎士の後ろから飛びこんできた青い影をリーネは見た。
そのまま白騎士は振り向き様に片手の剣を振り下ろした。

次の瞬間にリーネの横に倒れたのはキルだった。

「駄目じゃない?ご主人様に動かないように言われていたでしょ?」

白騎士の声に対してキルは腹部から血を流し、体を震わせたまま体を起こした。
リーネはキルを止めようと手を伸ばし、キルと一瞬視線が重なった瞬間、キルは今まで上げたことがない大きい、広いコロシアム全体に聞こえそうな遠吠えをした。
同時に青い毛並みは光り、先に受けた傷は徐々に塞がって行った

「自然治癒?珍しい毛並みだと思ったけど…貴方…聖獣だったんだ?ご主人様のピンチで覚醒したんだ」
「聖獣…?キルが?」
「かつては神さえも恐れたとかいうけど、その名に恥じない治癒能力と防御力…フェンリルね」

キルは再び遠吠えを上げそれにより衝撃を発しその体からは光を放ち続け、主を守るために白騎士と対峙した。