複雑・ファジー小説
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.41 )
- 日時: 2014/08/03 02:23
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第4話
ジンは刀を鞘に納めると再び居合抜きの構えを、Nは刀を抜いたままジンに向かって斬撃を放った。
刀同士でぶつかりそのまま向かいあったが、すぐにジンは片手に持った鞘でNの脇を狙うも左腕でブロックされた。
「くっ…これもだめかよ…」
「なかなかの一撃だね…少し驚いたよ」
ようやくNの動きに慣れて来たジンはすぐに一歩後ろに下がり、刀を鞘に納めた。キルもジンの横に移動してNと距離を取った。
「思ったより強いね。僕も本気にならないとね」
「ならその本気を見せてくれよ!」
同時にジンは緩急を付けた左右の動きを始めた。しかし実際はジンのその早やさからそう見えているだけで当然Nもそのことは分かっていた。Nが刀を構え直した瞬間ジンの動きが止まった。正確にはそう見えただけだった。
「こっちだね?」
Nが右に刀を振り下ろすとそこから姿を見せたジンは居合抜きで振り下ろされた刀を受け止めた。
すぐに鞘で連続攻撃と考えた時、一瞬Nの背後に見えた白い虎に気付き殆ど無意識に後ろに下がり、それに合わせてキルが体当たりをし、それにより先にジンがいた場所に大きな3本の爪跡が残った。
ジンはすぐに態勢を立て直しキルもすぐにNから距離を取った。
「運が良かったね。そこのウルフがいなかったら当たっていたのにね」
「その技が出る瞬間に白い虎が見えたぞ…」
「よく見えたね…風の奥義白虎…高速の3連斬撃だよ」
「ずいぶんサービスがいいな?奥義なんだろ?」
ジンはNの説明に対してジンは再び刀を鞘に納めてから居合抜きの構えでNの動きを観察した。
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こいつは正直今まで見てきた奴らの中では比べ物にならなかった。
こんな状況なのに俺は何故か胸が高鳴った。
「今度は見切ってやるからな?」
「おもしろいね…なら行くよ?」
男は刀を構えたまま飛び込んでくる様子を見るとその縦斬りを横にかわしそのまま居合の体制になった時だった。風が自分の周りを纏う感覚、そして身動きができなくなった時、さっきの白い虎が前足で抑えつける姿、反対の手から振り下ろされていく様子が見えた。
咄嗟に刀でその腕の攻撃を抑えようとした。その衝撃で体が跳ね飛ばされているのが分かった。
「ぐあ!く…」
「またこのウルフに助けられたね?」
さっきキルと呼ばれていたウルフは俺のすぐ横で倒れていた。それでも体を震わせて立ち上がった。
「俺も負けてられないよな…」
ウルフが立ちあがっているのに自分が寝たままでいるわけにはいかないという対抗心で、鞘に納めた刀を杖の代わりにして立ちあがったが先の攻撃の威力の高さか足は震えていた。
「その様子だと次は無理みたいだね」
「だが…今の奥義はもう分かったぞ…いくつかの風で対象の動きを封じての3連撃と衝撃を与えるものだろ…」
「まあ大まかに当たりだね」
男は刀を構え直すと刀を縦に振りかざすと再び背後から白い虎が出てくるのが見えた。
恐らくこれは避けられないな…
そんなことを考えながら自分の元に向かって来た白い虎を見つめていた。
その間に入ったのはさっきのキルとかいうウルフの飼い主だった女だった。
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リーネはジンに向かっていく白い虎の様子に気づき、すぐにその間に割って入った。
「バカ!早く逃げろ!」
自分が受けてボロボロになった技の間に入り込んだリーネにジンは当然のように叫ぶ。
その瞬間リーネの薬指に嵌められた指輪にが淡く光るとそれと共に白い虎の姿は消えて柔らかいそよ風だけが通り抜けた。
「バカな…な…何を…」
Nは目の前で起きたことが理解できず初めて動揺を見せた。
リーネは冷静にNの様子を観察した。次の動作、奥義を出す前触れ何一つ見逃さないつもりで見つめた。
「どうやって防いだのか聞かせてもらおうか…流石に驚いた…」
「あの技は風の魔術との組み合わせだよね?だからその風を別のタイプ風に作り替えたの。素材はたくさんあるからね」
リーネの話を聞いてからすぐにNは刀を構え直した。同時にNの背後に見えた炎を体に纏う鳥が見えた。
「あの技は…また別の奥義か?」
ジンはNの後ろにいる鳥の姿を確認した時に見えたのは2つの光景だった。
1つは当然自分達に向かってくる鳥の姿。
そしてもう一つ見えたのはリーネのもう一つの指輪が光った様子だった。
それと共に現れた水の壁がカーテンのようにその鳥を飲み込み消し去った。
「それはさっき見た…だから対策できるよ…」
リーネの言葉に対してNはさらに別の構えへと変えた。まだ見せていない技を使おうとしているのが分かり、リーネ、キル、ジンは身構えた。
「はい!そこまで!」
Nが刀を振り上げようとした時に聞こえた少女の声。
それと共にリーネとジンの視線に入ったのは、いつの間にかNの隣で刀を指先で捉えたかつて白騎士と名乗った少女、Lの姿だった。
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「白騎士さん…?」
「覚えていてくれたんだ!うちの部下二人がごめんね?」
久しぶりに見た白騎士は最後に遺跡で見た時と全く変わっていなくてこんな状況なのににこやかな応答だった。
Nは刀を動かそうとしているけどまったく動く様子はなく、睨むような様子でNは白騎士を見た。
「どういうつもりだい?君がここに来るなんて聞いてないよ」
「だって今貴方はリーネちゃんを本気で殺そうとしたでしょ?だから止めに来たの」
白騎士の言葉にNは急に刀から手を離した。正直何が起こったのかは私には分からなかったけど戦闘意識がなくなったのは分かった。それと共に分かったのは白騎士がNと言う人よりも遥かに強いということだった。
「まあいいわ。多分まともに戦ったら今のリーネちゃんには勝てないだろうし」
「お前らは何者だよ。どうしてこの村を…」
ジンの姿を見た白騎士は一瞬驚いた表情を見せた。ただ見たのはジンというよりジンが持っている刀の方だったようにも見えた。
「あら?貴方…N?失態があるじゃない?」
「N?お前ら!この刀のこと知っているのか!?」
ジンの様子が急に変わった様子に私は驚いた。多分私が見て来たジンの表情の中で一番真剣な表情だった。
「知っているよ?私達が消した村の宝だった刀でしょ?」
白騎士は楽しそうな口調で話している様子で、ジンは今にも飛び出そうとしている様子が見えるけどまだダメージが残っているみたいで体が震えていた。
「白騎士さん…貴女は…何者なの?」
「まあ…もういいかな。私の本当の名前はL。そしてこいつはNよ。リーネちゃんの仲間にいるKの元仲間よ」
「K?もしかして…キルのこと?」
白騎士さんの言う言葉からどんな立場の人か予測できた。一つだけ違うとしたら…その瞳が人を何人も殺しているはずなのにNと言う人は全く後悔をしている様子もないし…白騎士…Lはそんな話さえも楽しそうに話していた。
「キル?へえ…今はそんな風に名乗っているの?本当に腑抜けになったんだ」
「腑抜け?そんなことないよ!キルは…少なくても…あなた達みたいに平気で人を殺したりしないよ!」
「ふーん…リーネちゃんもまだあいつのことちゃんと知らないんだ?」
Lは何故かクスクスと笑い始めた。なんか面白いことを見つけたように。
ジンも未だに刀を構える様子を見せているけど相手との力の差が分かるのか手を出せずにいる様子だった。
「じゃあそろそろ帰るわね。次に会った時はちゃんと捕まえてあげるからね?」
Lはまるで友達と別れるような調子で手を振って、その瞬間LとNの足元に魔法陣が浮き上がり、そのまま光と共に姿を消してしまった。
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「よかった…」
リーネは二人の姿が見えなくなると緊張感が解けてその場に座り込んだ。
「助かった…助けるつもりが逆に助けてもらう感じになってしまったな」
ジンも座り込んで、勇ましく飛び出して完全に負けてしまった自分の情けなさに笑ってしまっていた。
「いいよ…ジンがいなかったら私はこの指輪を取りに行く暇がなかったし…キルもやられていたからね」
リーネは消耗して地面に座り込んだ様子のキルの頭を撫でてから笑いかけ、ジンは未だに不思議そうな表情を浮かべていた。
「何で俺の名前を知っているんだ?」
「やっぱり覚えていない…」
リーネはジンの反応にため息をしてまずはこの状況をどこから説明していくべきか考え始めた。
