複雑・ファジー小説

ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.45 )
日時: 2014/08/23 15:10
名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)

第8話

「誰でも立ちはだかるなら…」

一人で前に出て来たRに対してシンは迷うことなくマグナムを引き抜き、銃弾を発砲するも当たり前のように体を逸らして銃弾を避けた。

「終わり?まさか手加減?」

Rの言葉に反応するよりも早くフランは横に回り込み、槍で薙ぎ払おうとするもその一撃はRの指先で止められた。

「まじかよ!フランの一撃が指だけで!?」
「驚いている暇なんてないわよ!」

すぐにカグヤはRに向かって飛び込み、それに合わせるようにRは槍ごとフランを投げてカグヤに激突させ
二人はそのまま大木に叩きつけられた。

「二人係でこれ?」
「この…今度は俺が!」
「待ってください…」

つまらないオモチャを見るようにRはがっかりとした様子を見せ、続くように飛び込もうとするバードの足をシンは払い転ばせた。

「いきなり何をするんだよ!?」
「バードさんを止めるのはこれが一番簡単ですから…」
「作戦?いいよ…待ってあげる…」

Rの言葉に対してシンはマグナムとハンドガンを用意し、バードは大剣をもう一度構え直した。

「彼女にはこのままぶつかっていったらやられます…」
「まあ…あいつらがそれは証明してくれたな」
「だから敢えて同じ手を使いましょう…」

バードに対して簡単に説明をいていき、一発だけ撃ってしまったマグナムに銃弾を込めた。

「ん?ちょっと待て!じゃあさっきの俺への足掛けは何だよ?同じ手で行くならいらなかっただろ!」
「銃弾に弾を入れたかったので一度流れを斬りました…」

淡々とした口調のまま説明をしていくシンに拳を握りしめそうになるもすぐに目の前の敵に向き直った。

「準備できたんだ…じゃあ作戦の結果…見てあげる…」
「あまり俺達を甘く見ない方がいいぞ!」

無防備のままに構えるRに対してバードは飛び込んで、同時にシンはハンドガンを発砲した。当然のようにそれを横に避けるRに対してバードは横薙ぎに大剣を振るった。当然のように刀身を片手で受け止め、それに合わせてシンはマグナムを構えた。

「それなら無理…」

Rはすぐに大剣ごと盾にしようと強引にバードの体ごと自分の前に移動させた。予想以上の怪力のせいかあまりに簡単に自分の体を持ち上げられたバードは驚きながら「うお!?」と声をあげていた。

「その手は読めています」

シンはマグナムを構えたままさらにもう片方の手に握るハンドガンを構え直しバードの体の隙間からRに銃弾を撃った。Rはその銃弾を空いている片手で撃ち落とした。

「それじゃあ当たらない…」
「これはどう!?」

Rの両手がふさがっている間に先に飛ばされたカグヤはRの後ろに回り込み魔力を込めた拳で振るった。

「おしかった…」

カグヤの拳に立ちはだかったのはRの身に付けたマントだった。まるで意思を持つようにマントはカグヤの拳を防ぎそのままバードはシンの元に投げ飛ばされ、そのままの勢いでカグヤに裏拳放った。
避けられないと判断したカグヤは魔力を込めた腕で受け止めようとするも直撃の瞬間にボキボキと鈍い音を感じそのまま吹き飛ばされた。

「カグヤ!」

吹き飛ばされたカグヤを受け止めたのはフランだった。カグヤの右腕は不自然な方向に曲がり明らかに折れていることが分かる状態だった。

「大丈夫か?今回復してやる…」
「あ…あんた…大丈夫な訳…?」
「今はそれどころじゃないだろ!」

本来カグヤが苦手なフランはそのことさえも気にする余裕がなく一度サクヤの元に戻った。

「カグヤちゃん!」
「大丈夫…腕以外は問題ないです」

駆け寄ってきたサクヤにカグヤを預けた時、Rが自分の大鎌に向かい歩き始める様子が目に入り、3人は身構えた。

「思ったより強い…見誤ったこと…謝る…」

Rは地面に突き刺したまま置いていた大鎌に手を掛けて引き抜いた。

「お詫び…今度はちゃんと相手をしてあげる…」
「あれを受けたら…一発でアウトだな…」

バードは大剣を構える中、横で微かに震えているシンの姿が目に入った。バード自身も正直この状況は震えるほど怖かった。ただシンのいる手前そんな様子を見せるわけにはいかなかった。

「シン…バードさん…今回は長期戦だ…あの鎌はもちろん…捕まったら…アウトだ…」

フランは槍を身構えたまま二人に話し目の前で大鎌を片手に持つRと向き合った。

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「やられたな…」

炎の鞭を受けた左手から焦げた臭いが発ち、片膝を付いたままキルは腕に炎を纏ったIを見た。

「新調した服だから弁償してほしいな…」
「無理…」

Iの言葉に反応するように炎の鞭は再びキルにまるで生きているが如く軌道が読みにくいように縦横に動き回り、頭の中では避けていても徐々に手足に鞭を受けていく形になり距離を取った。

「面倒な武器だな…おまけにお前の力はその脚力か」

キルが話し終える直前で先と同様に衝撃と共に背後に回り込んだIは再度炎の鞭を振り下ろそうとする。
それとほぼ同時にキルは前に反転しながら飛び込み銃弾を3発撃ち込んだ。その銃弾を受けてIの動きが止まった。

「被弾…久しぶり…」
「その割にまったく動じる様子がないな」

銃弾が命中したと思われたIは特に動じる様子もなくもう片方の手を前に出すと同様に炎の鞭が現れた。

「少し…本気出す…」
「なら…俺も…本気で行くぞ?」

キルの瞳は赤から青に変わり前に飛び出すとその目に映ったのは、自分に向かって飛んでくる炎の鞭、そして体が陽炎のように揺れるIの姿だった。

「そういうことか…」

キルの呟きと共に鞭を掻い潜り、そのまま銃そのもので打撃を放つと何の手応えがないままにすり抜けてそのまま距離を開けた。

「面倒なタイプみたいだな…」
「みんな…貴方を手放さない理由…その眼ね…」
「多分な。そのおかげでお前の術の正体も分かった」

銃弾に弾を込めながらキルはIに対して視線を切らなかった。

「正体…」
「魔道士の中の最上位賢者だな…」
「その中のフレイムマスター…体を炎に変えられる…」
「だから銃弾が効かないし…こいつで触れていなかったらやばかったな…」

特殊金属でできて本来熱を持つことがない銃が熱を発していることから余程の熱をI自身から発せられていることが分かった。

「このローブは魔力の制御用…そうじゃないとこんな森…灰になる…」
「そうだろうな…だから面倒なんだよ」
「でも…今日はいい…貴方の力が分かったから…」

Iは両手の鞭を解除し踵を返した。

「K…次に貴方の前に現れた時は…殺す…」

一言だけを残してから衝撃と共にIの姿は消えてしまった。

「面倒な奴に…眼を付けられたな…」

銃を納めたキルは先に行かせたメンバーの元に向かった。

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森の中にある泉の前でIは足を止めた。そのまま一本の木を無言で見つめてから片手を差し出すとガサガサという音を立てた。

「どうだった…Kの方は…」
「J…来ていたの…」

黒のローブに身を包んだJを確認するとIは手を下げた。
I自身はJあまりいい印象を持っていなかったものの他の人間と関わることがなかったことからそれが普通であると認識していた。

「Kは…想像よりやる…。でも今の戦力で問題なくあの町くらいは消せる…」
「ならお前に次の指示だ。確認してきてほしいことがある」
「前に言っていた監視ね…分かった…」

Jから次の話を聞くとIはすぐにその場を飛び立ち、Jもすぐにその場から光と共に姿を消した。