複雑・ファジー小説
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.6 )
- 日時: 2014/06/24 16:41
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第5話
「ふう…リーネはできてる?」
「うう…まだぁ〜」
リーネの手にはゴチャゴチャと何を作っているか分からない紙が握られていた。
頭自体は悪くないのに手先は本当に不器用なんだから…。
「やっぱりあんたに造花は無理なのよ」
むくれて私の作った造花を見るリーネに自分の口元が緩んだ。
元々、お姉ちゃんのやっている花屋を少しでも手伝えるように始めた造花。飽きっぽい私だけど仕事だと思えば案外続けられた。というよりお姉ちゃんの助けになれたから続けられたんだと思う。
「カグヤちゃ〜ん…できないよ〜」
「もう…ほら…貸してみなさい」
涙目で何か分からないものになっている紙をリーネから取り、眼の前で説明をしていきながら再び造花を作っていき、白い造花のバラをリーネの前に置いた。
「はい。これで出来上がり。もう大丈夫?」
「作り方はもう分かっているけど…思うようにできないんだよね…」
リーネらしい言葉に私は思わず笑ってしまった。
涙目のまま私の作った造花を見るリーネに新しい紙を手渡した。
「ほら次。今度は一緒に作ってあげるわよ」
「うん…今度こそ上手に作るよ!」
再び紙を握り教えた通りに作り始めた様子を見てから自分も作り始めようとした時、家の呼び鈴が部屋の中に鳴り響いた。
「お客?今日は定休日だから作り貯めしておきたいのに…」
「私が出ようか?」
「じゃあお願いするわ。どうせ任せても進まないだろうし。」
「すみません…誰かいませんか?」
「は〜い!ただいま〜」
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リーネは扉をあけて来客を見た。
金髪で色白。瞳の色はグリーン。服装は上下で白の軍服に皮のブーツを履いている。顔立ちも美人で思わずリーネは茫然としてしまった。
「えっと…どちらさま?」
ハッとしたように一度首を振ってから普段見ない相手に問いかけ、その質問に答えるように懐から目の前の人物の顔写真が書かれた手帳を見せられた。
「僕はフラン・リーゼル。昨晩のある事件の聞き込みで来ました。昨晩何か気付いたことはありませんか?」
「ほえ?えっと…男の人?」
フランの提示した手帳に書かれた内容でリーネが真っ先に眼を付けたのは性別の項目だった。
ちょっとした呟きにフランはムッとしたようにリーネを睨み、手帳をしまって軽く咳払いをしてから聞き込みを再開し始めた。
「…それで昨日の夜に何か怪しい奴を見たり変わったことはなかったか?」
「えっ?えっと…私は…昨日…すぐ寝たから分からないんだよね…」
性別を間違えられたことがよほどショックだったのか、あるいは気に入らなかったのか言葉の節がきつくなった感じに多少びくつき、昨晩完全に寝入っていたことを話した。
収穫がない回答にため息を漏らし、フランはリーネに視線を向けた。何かを見出したように。
「君…名前は?」
「リーネだよ?急にどうしたの?」
「いや…少し気になっただけだ」
フランからの言葉に軽く首を傾げるリーネを見た後、右手を縦に軽く振り直後に先に持っていた手帳は光とともに消えた。
「えっ?すごい!今のどうやったの?」
「錬金術だ。今はこれを分解したんだ…そして再構成だ」
再び片手を縦に振り手帳が光とともに現れ、リーネは現れた手帳を奪い見回した。
「すごい…元に戻っている…」
「もし錬金術に興味がある場合は3ヶ月後…そのころには任務も空くから街の交番に来るといい。君には才能があるみたいだ。」
「わ…私にもできるの?」
「君の努力次第だ。ただ一人ではやるな。最初は制御が難しい。」
「うん…分かった」
手帳を再び懐にしまい、そのまま踵を返し帰るフランを見送りリーネは自分の手に視線を見た。
(私にもあんな力が?)
「リーネ!いつまで時間掛っているの!」
奥からカグヤの声を聞きリーネは慌てて家に戻った。フランに言われた言葉を頭に浮かべたまま。