複雑・ファジー小説

Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.11 )
日時: 2014/05/18 16:08
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: f/UYm5/w)

 Act.4 激突、戦いの狼煙

 
 「ごめんなさい・・・あなたたちに迷惑を懸けてしまって・・・」

 シエルが暖かいココアが入れられたカップを持ち、申し訳なさそうに謝る。

 ここは極東支部ラウンジホール。

 局員たちが憩いの場として訪れる施設である。

 「いいんだよ、シエルちゃん。困ったときはお互い様だから。・・・それより記憶の方はどう? あれから何か思い出した?」

 ジナが紅茶を持ちながら手を振り、それから心配そうに聞く。

 「それが、まだ・・・」

 かぶりを振るシエル。

 相変わらず記憶は戻る気配がない。

 漠然としたおぼろげな断片のようなものしか思い浮かばなかった。

 「焦る必要はないと思うわ。何かの拍子に思い出すかもしれないし。キッカケみたいなものがあればいいのだけど・・・」

 ケイがコーヒーを飲みながら話す。

 正体が解らないこの少女を警戒していたが、接している内に素直で真摯な人柄を感じて好感を持つようになった。

 「そうです。今はゆっくりと身体を休める事が大事です。無理をしてはいけません」

 ユニスがホットミルクをフーフーと冷まし啜り、言う。

 シエルを助けた三人の少女。

 まだ接した時間は極僅かだが、少女のひととなりに惹かれていた。

 それだけではなく、その容姿にも。

 美しく、流れる蒼黒の腰まである艶やかな髪。

 切れ長の真紅の双眸、整った黄金比の顔立ち。

 スタイルの抜群な引き締まった肉体。

 自分達と同い年ぐらいの筈なのに、次元が違う。
 
 この少女には人を惹きつける何かが在る事を無意識の狭間で感じ取っていたのかもしれない。


 と、その時。


 『緊急警報発令! 緊急警報発令! 極東支部全域に、対竜種警報が発令されました! 局員及び住人の皆さんは、直ちに最寄りのシェルターへと非難をお願いします! 竜種の進行速度は緩やかです、安全かつ落ち着いて迅速な対応をして下さい! 繰り返します・・・』


 突然鳴り響く警報とアナウンス。

 慌ただしく騒然となる支部内。
 

 「みんな、聞こえた!? 竜種出現だよ!!」

 ジナが立ち上がり通路へと駆ける。

 「判ってるわ、ジナ! ドッグまで急ぐわよ!!」 

 ケイも素早く移動する。

 「出撃ですね! 頑張ります!!」

 ユニスも直ぐに席を立ち、後を追う。

 「あっ! シエルちゃんは局員の人たちと一緒に避難区域に向かってね!! じゃあ、行って来るよ!!」

 途中、ジナが振り返り言い、そのまま走り去った。

 シエルは突然の事態にも慌てる事無く、ジナの言葉に従い騒然となるラウンジから退避する局員たちの後を追った。
 
















 ウロボロス極東支部司令部。

 「こちら司令部! 竜種別名『ガーゴイル』の群勢を確認しました! 出現地、進行方向は北北西! 此方に向かって来ています!」

 沢山のオペレーターたちがパネルボードを忙しなく操作する。


 「こちら、ジナ・ジャスティン。清龍セイリュウは遭遇予想地点に進行。これより迎撃態勢をとり、竜種を撃滅する!」

 通信が入り、モニター映像にジナがドラグーンのコックピットに搭乗した姿が映る。

 「こちらはケイ・キサラギ。目標地点まで後僅か。紫龍シリュウは戦闘モードに移行、これより竜種殲滅に入る」

 次いでモニターにケイが映る。

 「こちらはユニス・ミル。ドラグーン黄龍コウリュウ戦闘準備完了。竜種迎撃作戦を開始します」

 三つめのモニターにユニスが同じく映る。


 それを確認した局長カガミは頷き指示を出す。

 「よし、三人とも! 人を脅かす竜にその力を見せ付けてやれ!! 竜種共を駆逐せよ!!!」


 「「「了解!!!」」」


 三機のドラグーンが勢いよく荒野を走り抜けていった。