複雑・ファジー小説

Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.12 )
日時: 2014/05/08 12:44
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: A9wxTbZM)


 荒れ果てた大地の向こうから黒い影が押し寄せる。

 徐々に視えてくるその姿は、異形。

 巨大な蝙蝠の翼を広げ、蜥蜴の様な頭とワニの様な口からゾロリと生え揃った牙を覗かせる。

 身体は強靱な鱗に覆われ、四肢からは鋭利で凶悪な爪を晒す。

 赤い眼光で獲物を狙い定め、けたたましい咆哮を響かせながら大群で飛行し此方に向かって来ていた。


 「来たよっ! 竜種ガーゴイル!! やるよ、清龍!!!」

 ジナがコントロールレバーを前傾し、アクセルペダルを踏み込みドラグーンを加速させると同時にバーニアも吹射させ、群れる怪物の軍勢に勢いよく飛び込んだ。

 「はぁああああっ!! 爆爪竜撃迅!!!」

 ドラグーン清龍の両手の腕甲から鋭利な鉤爪が展開され、ブーストを全開、凄まじい速度で竜種に接近する。

 メインモニターに移る悍ましい姿に躊躇することなく、トリガーを握り込む。

 「ひとつ!」

 疾風の斬撃が先頭の竜種を、肩口から引き裂き両断する。

 「ふたああつ!!」

 続いて、その横の竜種に駆け抜けざまに一閃。

 「みっつ!!!」

 眼前の竜種を、構えた両腕で頭から叩き斬った。

 瞬時に細切れにされた仲間の惨状に、ようやく反応したのか、周囲の竜種が一斉にジナの駆る竜機に襲い掛かる。

 「遅い! そして甘い!! 一気に決める!!! 滅爪竜乱千裂陣!!!!」

 一瞬、時間が緩やかになり、スローモーションのように変化すると、清龍が超速で旋回して囲む竜種に幾重にも裂閃を奔らせる。

 時の流れが戻ると周囲の竜種は木端微塵に見事に寸断された。




 「相変わらず、ジナは単独で特攻するわね。援護するこっちはいつもヒヤヒヤするのよ」

 素早き機体を滑空させ、ケイは紫龍の両腕に内蔵された特殊兵装を展開させた。

 「纏めて狩り尽くす!!! 空破竜輪剣!!!!」

 前方に突き出した両腕から円盤状の武器が発射、無数の刃を展開したチャクラムがブレードワイヤーを引いて飛翔し、並み居る竜種をズタズタに斬り裂き壊滅させる。




 「おふたりとも、前に出過ぎですよ。敵の数は、まだまだ健在ですから」

 飛び掛かろうとする竜種が次々に爆発していく。

 ユニスが機乗するドラグーン黄龍から、球体状のボディに羽根を持つビットを幾つも飛翔させてビームの雨を降らせる。

 「ドラコ・フライヤル!! ふたりを援護してあげて!!! エインシャル・ホーネットレイド!!!!」

 たくさんのビットが竜種を追尾し取り巻き、ビームで貫き爆散させていく。





 大地を黒い波で覆っていた竜種の群れはあっというまにその数を激減させられ、残すところ僅かとなった。



 「よぉおしっ! もうちょっとだね!! ケイ、ユニちゃん、もうひと踏ん張りだよ!!」

 ジナが清龍の拳を突き出し言う。


 「さっさと終わらせてお茶の続きをしないとね」

 ケイが紫龍の放ったチャクラムを引き戻し受け止める。


 「ジナさん、ケイさん。最後まで油断は禁物ですよ。相手は未知の生命体、何が起きるか判りません」

 ビットに囲まれながら黄龍のコックピットでユニスがたしなめる。

 

 戦闘も佳境、皆に幾ばかの余裕が出始めた時、それは起こった。


 大気が震え、彼方から殺気が迫る。









 怒轟。










 荒野の空を異様に巨大な影が包み込んだ。