複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.14 )
- 日時: 2014/05/18 16:09
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: f/UYm5/w)
Act.5 天地光輝、暗黒の太陽
ウロボロス極東支部。
その遥か上空から禍々しく張り詰めた怒気を放ち、凶獣が巨躯を震わせて飛来する。
すかさず待機していた汎用型ドラグーン甲型『応龍』を操縦するパイロットたちがライフルやランチャーを装備し迎え討つ。
「総員戦闘態勢!! 敵は詳細不明の巨大原竜種!! 一斉射撃で、迎撃!! ジャスティン隊員たちが戻るまで時間を稼げ!!」
先頭に立つドラグーンのパイロットが武器を構え、指示する。
「「「了解!!」」」
後続に続くドラグーンたちがそれぞれ武器を手に応じる。
皆、覇気を滾らせ上空から迫る原竜種に攻撃する。
隔壁に覆われた要塞型の支部から砲門が幾つも現れ、銃身を覗かせると重低音を轟かせ撃ち放つ。
ドラグーンと要塞からの無数の砲撃。
弾幕の轟爆が異形の巨体に直撃し、幾重にも浴びせられ掛け粉塵が立ちこめ、姿を覆い隠す。
それでも容赦なく叩き込まれ続く一斉掃射。
やがて機銃の嵐が止み、包み込む硝煙と爆煙。
皆一様に緊張した面持ちで窺う。
これほどの攻撃を受けたのだ、無事で済むはずはない、と。並みの竜種なら一溜まりも無く、原竜種とて無傷では済まされない。
例え倒せなくても傷を負わすことが出来たのならば、駆け付けるジナたちに繋げられるのだ。
そう思い、固唾を飲む一同。
だが、
真紅の双眸が煌々と燈り洩れ出でる。
怒咆が貫き、大気を震わし、吹き飛ばされる粉塵。
その巨躯をまざまざと見せ付ける原竜種。
無傷、ではないが身体に負った傷が驚く間も無くことごとく修復されていってしまう。
轟かせる咆哮。
「・・・何て化け物だ・・・」
誰ともなく呟いた。
原竜種は大きく息を吸い込み、腹腔を膨張させると開け放った口角から凄まじい猛炎の塊を吐き出した。
超高温の巨塊が炸裂、地上のみならず空中のドラグーンたちも爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる。
連続して放たれる爆炎。
ドラグーンたちは何とか応戦しようと弾幕を打ち込むが、ことごとく焼き払はれ、墜とされていく。
支部周辺の荒野は火炎に飲まれて地獄と化した。
原竜種が炎の熱に照らされながら、兇悪な眼差しを要塞支部に向ける。
「ドラグーン稼働率四十パーセント・・・! 原竜種尚も接近中! ま、守り切れません・・・!! このままでは・・・!!」
「諦めるな!! 時間を稼げ!!! 全砲門を集中させろっ!!! ここで喰い止めなければ、私たちに明日は無いぞ!!!」
カガミが叱咤し、奮い起こそうと励ます。
その時、レーダーに反応が現れる。
「えっ!? ドラグーンが一機、格納庫から発進されました!! で、でもこれは・・・このドラグーンは既に機能停止で何年も保管されていたはず・・・」
オペレーターが戸惑いの声を上げる。
「なにっ!? 一体誰がっ!?」
カガミも驚きレーダーを視るが、確かにひとつの機影が基地から発着されていたのを確認した。
その機影は真っ直ぐ原竜種を目指し進行していた。
炎と黒煙に包まれ焦土とした大地。
駆け抜け、ひた走る一機のドラグーン。
初期汎用試作型としてデザインされた装甲は無惨に剥がれ、所々大破し、回路が露わとなり、片腕は上腕から無い。
動きはぎこちなく、動作するたび火花を散らす。
だが、力強く地面を蹴り上げ、疾駆する満身創痍の機体は歴戦の雄姿を物語る勇ましいものに視えた。
そして、傷だらけの痩躯は獄炎と轟弾渦巻く戦場の渦中へと飛び込んでいった。