複雑・ファジー小説

Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.15 )
日時: 2014/05/09 13:24
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: fHW109JF)

 
————焼け焦げ燻ぶる大地。

 大破したドラグーンからパイロットを救出する者、何とか己の機体を必死に動かそうとする者、怪我人を抱えて安全地帯を探す者、地獄のような様相を呈していた激戦区。

 原竜種による反撃で、極東支部勢力は大幅にその勢力を失った。

 
 激昂する怪物。

 諦めず残ったドラグーンが攻撃するが、巨大な尾で振り払われ、纏わりつく羽虫のように一蹴されてしまう、さらには要塞からの重度の砲撃すらも煩わしいと、圧倒するほどの豪炎を振りまく。


 果敢にも立ち向かおうとするドラグーンたちだったが、近づくことすらままならない。

 
 暴虐の竜が支部を睨み据え、口から火炎を燻らせる。

 その咢が大きく開口され————。 

 
 「ハァアアアアアアッッッ!!!!」


 飛翔する機影が原竜種の鼻先にその拳を打ち付け、衝撃で口が閉じられた瞬間、爆発する。

 燃え上がり撃墜される暴竜。
 
 突然の闖入者に戸惑う者たちを追い越して、旋風を纏う半壊のドラグーンが躍り出る。

 「竜種!! わたしが貴様たちの存在を消し去る!!!」

 燃え上がる爆炎から、原竜種が煙を吐きながら両翼を広げて現れ、上空へと飛翔する。

 「逃がさんっ!!」

 傷痕の竜機、そのコックピットで蒼黒の少女シエルが射殺さんばかりの眼光で一別し、舞い上がる巨躯を追う。

 
 不安定なバーニアを加速させ、機体を上昇させるシエル。

 翼を翻した暴竜が火炎弾を撃ち降ろした。 


 炎が直撃する寸前、目の前の異物に意識を全集中させるシエル。

 「ハァアアアアアッ!! 弾けろっ!!!」

 機体の前面に幾何学模様のフィールドが形成され、炎弾が爆散、弾け飛ぶ。

 そしてそのフィールドを纏った勢いのまま、反応弾のごとく超加速し、原竜種の胴体に突貫、片腕の拳を突き上げた。

 「墜ちろぉおおおおおおおおっっっ!!!!!!!」

 衝撃で仰け反り吹き飛んだ巨体に超高速で降下し拳を打ち込むと瞬時に下方まで衝撃波が突き抜け、真っ逆さまに原竜種を叩き落とした。


 轟音、烈震。


 爆煙、衝撃。


 大地に穿たれる巨躯。


 


 ただその光景を見ていた者たち。

 突如現れた手負いのドラグーン。

 一昔前の型遅れの機体、どこにそんな力があるのか。

 しかし現に戦っている、圧倒している。

 一体誰が乗っているのか、それは解らないが・・・。

 だがこの現状、思わずにはいられない。

 勝てるのでは・・・?

 このまま勝てるのではないか、と?

 誰もがそう思ったろう、そう思いたい。

 この絶望的な状況で現れた救世主。

 すべての者が望みを託したくなるのは、必然だ。 





 しかし、無情にも混沌はその僅かな希望の兆しさえも嘲笑うかのごとく、緩やかにと足元へと這い昇る。





 激叫。

 粉砕する大地。

 伸び上がる禍々しい四肢と巨躯。

 その躰は青緑の体液をしどどに滴らせながら、己に手傷を負わせた者に視線を送る。
 
 しかし、その身体は再生する兆しは無い。


 相対する竜機と暴竜。

 「まだだ・・・まだ足りない・・・この程度では仕留められない・・・」

 シエルは眼下の手負いの竜を見下ろす。

 「こんなものではない・・・呼び起こせ・・・絶対たる真理を・・・」

 まるで何かに憑りつかれたように言葉を繰り返し、操縦桿を強く握りしめる。
 

 「与えられ————『力』————原初————大いなる」


 そのとき、搭乗したドラグーンが脈動した。


 それだけではない。


 穿たれた焦土と化した大地に無残に倒れ伏す乗り手の無いドラグーンたちが呼応した。


 ————それは共鳴。


 力、望むべきものに差し伸べるように。