複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.16 )
- 日時: 2014/09/27 10:11
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 7ouSN2YT)
空中で鳴動する機体のコクピット。
非常電源の明かりさえ灯らない闇の空間に、赤い双眸が点々と輝く。
大破され転がるドラグーンたちが稼働を始め、その装甲が、その部品が解体、分解される。
「来い・・・」
深淵からの呼び掛け。
影よりも濃厚な暗闇さえも怯えさせ。
星に巣くう悪しき存在そのすべてを地獄の業火で焼き払う。
「・・・来い・・・!!」
カッ、と目を見開き、シエルが『力』を解き放つ。
「来いっ!!! 幽玄の調べと共にっ!!! わたしの力となりすべての邪悪を浄火せんっっっ!!!!!」
シエルの叫びと同時に地上の大破されたドラグーンたちが一瞬でバラバラに分離し、細かなパーツを巻き込んで上空の機体へと渦巻き集束されていく。
轟々と嵐が取り巻く無尽の機片が損傷した部分に取り付けられ、瞬く間に修復され、そしてコックピットを残すように機体全体がパージし、全身を幾何学模様の謎のフィールドが覆うと、次々と機材が組み込まれ組み直されて人型を構築していく。
中心核から順々に、かくそうあるべきだと言うように骨格、装甲が形を成す。
それは新たなる創造。
受け継がれる黎明。
宿命の鎖を焼き斬る終焉の焔。
残光が散りゆく荘厳かつ幽鬼のごとき外装を有する機体が現れ、居合わせた者は自ずと息を飲む。
幻想的な蒼と黒のカラーリング。
剣のようにそそり立つヘッドマウントの二対の鋭角。
真紅の眼腔に覆われたツイン・アイがすべてを見据え、見定める。
全身を鋭利なブレード型突起の外骨格で覆い、それ自体が凶器を担うことも思わせる。
蒼鎧のボディから連結する強靱な四肢、そして後背部から伸び上がる鋭い切っ先のウィング・スラスターがまるで猛禽の王を彷彿とさせた。
蒼黒の竜戦士。
大空を支配する狩人の覇王。
それでいて天使にも悪魔にも連想させる。
地上を焼く炎に照らされ、不気味に赤みを差し、輝く。
暗黒の太陽のように。
皆、目が離せなかった。
支部の管制室からカガミが一部始終を凝視していた。
「・・・なんだ・・・あれは・・・」
「————フィッティングデータ、ロード! スペック、FCSダイレクト、ラーニング・スタート! モーション誤差、サーボモーター限界値修正ッ! 過負荷部分フィールド・コート! リスタートオ-バーリミットッ、 オールマイゼーション!」
一新され、様変わりしたコックピットでコンソールを操作するシエル。
「オーバーフルコンタクト!! 唸れ、メルトニウム・ゲヘナドライブ!!!」
シエルが発する波動を受け、蒼黒のドラグーンのツイン・アイが赤く光りを放つ。
「アンフィスバエナッ!! わたしに力を貸せ!!! マテリアルアクセス!!!!」
蒼黒のドラグーン、アンフィスバエナの全身から、可視化された波光が迸る。
事象の限界を突破してなお高まる波動が増幅され、世界の根源にまでその手を伸ばす。
定められた因果律すら干渉し、創り出す『力』に導かれ、発生した莫大なエネルギーが空間を凝縮させ現出する。
凄まじい力場の渦が逆巻く虚空から形作られた。
それは巨大な『銃剣』。
天使と悪魔の羽根が相対するような神々しくも禍々しげな風貌を醸し出し、鮮やかな真紅の刃身を煌びやかに魅せつける。
「これが、貴様らすべてを喰らい尽くす断罪の冥銃『アヴァドゥーム』だっ!!!!」
血の様に赤い輝きを放つガンブレードをその手に携え、眼前の原竜種に突き付けた。