複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.19 )
- 日時: 2014/05/11 02:36
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: bTobmB5Q)
ウロボロス極東支部局長室。
「・・・そうか、そんなことがあったのか。すまないな、シノウラ。肝心な時に手伝う事ができなくて」
デスクのディスプレイモニターに黒髪ロングの妙齢の女性がすまなそうに謝るのが映る。
「いや、気にするな、タチバナ。負傷者は出たが幸い死者は無かった、結果的に原竜種は倒せたからな。お前たちも大変だろう? 今、世界中で『異竜種』が多発しているそうじゃないか。その討伐で忙しいらしいと聞いたぞ」
異竜種とは先日、支部を襲撃してきた原竜種のことである。
昨今、原竜種に限らず通常タイプの竜種まで、新種、変種が現れて世界を席巻する事態となっていた。その対応に追われ、バハムート、ヨルムガント、シェンロンが世界中を飛び回って縦断している。
カガミはディスプレイ越しにバハムート艦長ミヅキ・タチバナと会話を交わしていた。
ミヅキ・タチバナは巨大空中戦艦バハムートの艦長で、かつて初期ドラグーンたちをオペレーターとしてサポートした経緯があり、カガミと同期の親友でもあった。
「しかし、気になるな、その少女。自力でドラグーンを組み上げるなど、尋常ではない。エキドナのかつて研究していたプロジェクトを思い出すが・・・うちにも似た様な計画に関わった少女たちがいるのだが、何か力になれるかもしれん、こちらでも調べてみよう。それに、『九頭竜』と『ジャバウォック』の動向も含めて」
ミヅキが思慮顔で話す。
「ああ、よろしく頼む、タチバナ」
世界を脅かす者は、何も竜種だけではない。
あざとく利用し、覇権を狙おうとする者たちがいる。
それが先のふたつの組織、世界の新生、改革、改変を謳う超過激派武装集団『九頭竜』・・・最新の科学で世界のトップを握り牛耳ろうと企む団体『ジャバウォック』。
どちらも独自にドラグーンを所持、開発、製造し虎視眈々と火花を散らし対立し、時には小競り合いが起きる。
その裏には生化学企業『エキドナ』が暗躍していると思われ、対抗するため民間組織『ウロボロス』が設立されて今に至る。
カガミが頼み、ミヅキが頷くと少し間を置き、ミヅキが話し出す。
「・・・ところで、あの子たち・・・ジナたちはどうだ? ちゃんとやっているか? あの子たちのことだから迷惑をかけてるんじゃないかと思ってな・・・」
ミヅキが気まずそうにする。
「ははっ、彼女たちはよくやってくれているよ、もちろん良い意味で・・・少し騒がしいのと、やり過ぎがたまに傷だがな。もう極東のエースだ。あれほどの腕の立つパイロットをそちらが手放すのは痛手だっただろう?」
カガミが柔和に微笑む。
「いや、彼女たちが自分で志願したんだ。コロニーに移住することが出来ない人々たちを守りたいと・・・己の手で、目で確かめ、見極めたいと・・・」
ミヅキの言葉にカガミも頷き返す。
「・・・未来の綱橋を若い彼女たちに託してしまうのは心苦しいもの・・・互いに年をとったものだ、なあ、タチバナ?」
そして、ふたり過去の在りし日に想いを馳せる。
戦い、命散らした多くの者たち。
報いるためにも、己等が身を粉にしなければ示しがつかない、まだまだ少女たちには負けていられない。
そう、改めて誓うのだった。