複雑・ファジー小説

Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.26 )
日時: 2014/05/13 00:08
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 73kQpkiy)


 ウロボロス極東支部局長室。

 少女シエルが真新しい蒼碧のパイロットスーツを着用して局長カガミと対峙していた。




 シエルは先の異竜種との戦闘の一件で局長室に呼ばれた。

 局長カガミ・シノウラが、彼女にも今後、竜種との戦闘に参加してほしいと言ってきたのだ。

 どうやら、アンフィスバエナ構築の際、汎用型ドラグーン数体を分解して機体部品を使ってしまったので本来の機能を果たせす、支部の戦力が軒並み低下してしまったからだ。

 それは、さすがに自分に責任があるだろうことは理解できる。手を貸すのはやぶさかではない。

 この支部では彼女の噂は様々で、良きも悪くも一部の者たちから懐疑的な目を向けられていた。それでも何処の誰とも解らぬ正体不明の者に協力を要請するほど事態は切迫した現状だったのだ。


 「なるほど、事情は概ね判った、そういう訳ならば助力しよう。責任の一端はこちらにもある。助けられた恩義もあるからな」

 シエルは二つ返事で了承した。

 監視、警告の意味も兼ねているのも勿論あるだろう。様々な思惑が窺い知れるが、今は自分の記憶を探る足掛かりとして考えるべきだ。借りを返しつつ恩を売る。

 ケースバイケースで互いに利用させてもらおうと考え、利害が一致した。

 己のトラブルは自身で対処するが、第三者が悪意を持って危害を加えるならば、相応の対応はさせてもらうことを前提に。

 ジナたちには世話になったので極力彼女たちとは争いたくないし、そんな真似は、したくないが・・・。

 なるべくなら、この施設から逃亡せざる得ない状況は避けたい。『力』を使えば直接ドラグーンを遠隔で呼ぶことも操作も可能だ。出来る限り、しばらくは大人しくしよう。


 こうしてシエルは一先ず、極東の竜機乗りとして籍を置くことになった。



 それで支給された戦闘服を着込み、こうして立っているのだ。

 「失礼します、ジナ・ジャスティン、ケイ・キサラギ、ユニス・ミル三名到着しました」

 ノックがして局長室の扉が開き、ジナ、ケイ、ユニスが入室し、屹立する。

 「ああ、良く来てくれた。丁度新しいパイロットを・・・」

 カガミが話そうとするとジナがシエルを視て驚き、身を乗り出す。

 「あれえっ!? シエルちゃん、それパイロットスーツ・・・! やっぱりドラグーンに乗るんだね!!」

 「薄々そんな気はしてたものね、支部中シエルさんの噂で持ちきりだったし・・・歓迎するわ」

 ケイがさも当然としながらもにこやかに微笑む。

 「一緒に戦えるんですか! 嬉しいです、頑張りましょう!」

 ユニスが喜ぶ。

 カガミが咳払いしつつ、改めて話す。

 「今日から極東で君たちと共に戦う新たな仲間、シエルだ。面識はすでに済ませて・・・」

 その時、支部全体に警報が鳴り響く。

 『緊急警報発令! 竜種接近を確認! ただちに・・・』

 ジナたちはカガミを視るとカガミは頷き答える。

 「シエルちゃん、さっそく出番だよ! 行こう!」

 「ええ」

 シエルもカガミを一別し、共に頷くとジナたちと一緒に部屋を退出していった。


 
 「・・・彼女には監視もさほど意味をなさないだろう・・・あれほどの『力』が、今は我々に向かないことを願うばかりだ・・・」

 カガミは少女たちが去った後、重い腰を上げて、警報が鳴る中、管制室へと赴いた。