複雑・ファジー小説

Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.27 )
日時: 2014/05/18 16:13
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: f/UYm5/w)

 Act.8 修羅の炎、内なる焔


 広大な荒地、粉塵を大量に煙撒いて、ひた走る異形の塊。

 大きく横に広げた四つの足をドタドタと踏み鳴らし、一直線に群れを成し進むトカゲのような竜種バジリスク。

 そして、それを統率し引き連れる、より巨大で醜悪な怪物、原竜種ムシュフシュが長い舌をチョロチョロ出しながら大地を揺るがし、歩む。

 王に連れられた軍兵のように。

 竜種の群れが目指す目的は、その先にある極東支部。

 貪欲なまでの食欲をもって、すべてを喰らい尽くそうとしていたのだ。

 だが、それを許すはずもなく、阻止するべく四つの影が射し、上空より高速で飛来する。


 「はぁあああっ! 竜爪拳乱舞闘!!!」

 ジナが駆る清龍が竜種の列に機体ごと頭から突っ込む。

 両腕甲から展開した鋭い鉤爪を縦横無尽に演武さながらに華麗に振るい、トカゲもどきを片っ端から、木端微塵に破砕する。


 「切り裂け! 刹破裂衝竜戟輪!!!」
 
 ケイの紫龍が両手に振りかざし構えた二対のチャクラムソードを流麗な軌跡を描いて投擲。

 回転する諸刃がことごとく竜種どもを引き裂き、旋回しながら細切れに分解していく。


 「ここから先には行かせない!! スティンガーニード!!!」

 ユニスの宣言と共に、黄龍のバックパックから複数のビットが放たれる。

 高速飛翔し追尾する黄色の機球が連続してビームを射出、竜種に無数の風穴を開け撃滅させ、ときにはジナたちを守るためビームシールドを展開し攻撃を防ぐ。

 息を吐かせぬ怒涛の連帯攻撃。

 並み居る竜種の群れは瞬く間に、その数を激減させ、原竜種と僅かな取り巻きとなった。

 原竜種が嘶き突進、口腔から強力な酸液を吐き出し取り巻きの竜種をも跡形も無く溶かしながら、ジナたちの頭上に振り撒く。


 「フレアディヴァンバーム!!!」

 突貫する巨躯に間髪を容れず超高熱の火球が撃ち込まれた。

 火球が弾け、凄まじい炎の渦が原竜種と周囲の竜種を包み込む。それは散布された消化液もろともに焼き焦がす。

 激しい炎に身を焼かれながらも、巨体を振るい業火の呪縛から逃れようと、いきり立つ原竜種。

 そこに紅蓮の波を掻き分けて、蒼黒の機体が翔け抜ける。

 「・・・その身を焦がす焔は、星の痛みの嘆きと知れ!!」

 コックピットのシエルが鬼の形相で叫ぶと、アンフィスバエナが携えたガンブレードの真紅の刀身が輝き、長大な火炎の刃を形成する。

 「ジェネレーター出力全開! MGD解放!! 焼き刻め、アヴァドゥーム!!! イグニス・クリムゾンディサイドセイバー!!!!」

 身の丈を超え、天まで届くのかと見まがう程の煉獄の炎剣が振りかざされ、







 紅い残光が虚空に描かれた。










 空を、大気を、そして大地を熱波が焼き斬り、原竜種の頭部、胴体、その最尾に熱されたバターが溶けるように炎の閃光が奔り抜けた。

 

 数瞬後、僅かに遅れて高熱を伴う衝撃波が荒野を駆け廻り、残された竜種の残党ごと焼却し文字通り灰塵に変えた。
 




 それを上空で退避し、眺めていたジナたち。

 「・・・凄い・・・凄すぎるよ、シエルちゃん・・・」

 炎の余波で照らされ、目を細めるジナが呟く。


 「・・・彼女は一体何者なの? ・・・私たちとは明らかにレベルが違いすぎるわ・・・」

 ケイはシエルという少女に得体の知れない何かを感じ取り、背筋を震わせた。


 「・・・シエルさんもそうですけど、あのドラグーンからも異常なエネルギー値の力場を観測しています・・・」

 ユニスがコンソールを操作し、計測するが、すべての値を振り切れていた。












 今だ赤々と地表を舐め尽くし、燃え盛る炎。

 その焔中に揺らめく不知火のごとき蒼黒の機影を、ただ見詰めているしかなかった。