複雑・ファジー小説

Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.29 )
日時: 2014/05/15 13:24
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: hRfhS.m/)

 コブラ型の大蛇の異竜種は、シエルの悶える反応を楽しむかのごとく、微弱な放電を繰り返す。

 「ぐぅうううっ・・・!! がぁああああっっ・・・!!!」

 機体は黒煙を上げ、シエルは息も絶え絶えに電流に耐える。

 怒りと憎しみが渦巻き、モニター越しの目の前に映る怪物を殺意の籠った眼光で睨むと、せせら笑うように口角を上げる大蛇。

 再び放電を与えてやろうと、胴体がしなり出す。


 そこへ————。

 「竜爪虎襲撃!!!」

 清龍が脚甲から展開した鉤爪の蹴りを放ち、異竜種の巨躯を攻撃した。

 だが、蛇の強靱な蛇腹の鎧に亀裂を入れたが、柔軟な身体が衝撃を吸収し、さしてダメージは受けた様子が無い。

 「シエルちゃん! すぐ助けるから!!」

 ジナが追撃を敢行しようとすると、異竜種は眼前に捉えたアンフィスバエナを盾にし、電撃を発生させる。

 「あぁあああっ————ッッッ!!!」

 スパークが弾ける機体、シエルの叫びが木霊する。

 「シエルちゃん!?」

 前に出ようとするジナを後方から追い付いたケイとユニスが止めに入る。

 「待って、ジナ! 今、そいつを刺激したらシエルさんが!!」

 「駄目です! ジナさん! 落ち着いてください!!」

 ふたりの言葉に動きが鈍り、断念する清龍。

 「くっ・・・! でも、シエルちゃんが・・・!!」

 異竜種は、狡猾にもシエルを人質のように見せ付け、三機のドラグーンを挑発するようにとぐろを巻き、嘶いた。

 何かしら動こうとすると、蒼黒の竜機に電流を浴びせた。

 双方膠着状態に陥ったが、明らかにジナたちの分が悪い。仲間を見捨てて、攻撃など選択肢は決してない。

 何としてでも打破しなければ。








 
 アンフィスバエナのコックピット内。

 すでに身体の感覚が無いシエルは放電が駆け抜けるたび、朦朧とする意識の中に、ある光景がフラッシュバックする。














 遥かな、いにしえの時代。

 何万の竜種の軍勢に立ち向かう者たち。

 円卓を囲む十三の騎士。

 それぞれに剣をかかげる人影たち。

 竜種にして竜種にあらず、対抗する生きた十三の巨大な人型の鎧。

 その中心に強い意志と決意を瞳に現し、見つめる儚げな眼差しの蒼黒の少女。

 王剣をかかげ、眼前に頭を垂れ控える民衆に戦の刻を指し示す。 

















 我が同胞はらからよ、汝の名は・・・。



















 拘束された蒼黒の機体に幾何学の紋様が輝き、浮かび上がる。

 四肢が異様な駆動音の唸りを上げて、大蛇の巨尾を押し広げていき、それに気付いた異竜種は強烈な電撃を放電するも、機体を覆うフィールドが無効化する。

 そして尻尾は軋み、弾けるように爆散、細かな肉片を散乱させる。

 絶叫を響かせる大蛇。

 その姿が瞬時に空間に溶け込み消えるが、その行方を察知し視えているかのように銃剣を構えるアンフィスバエナ。

 連続して穿たれる火炎弾。

 そのすべてが異竜種の巨躯へと余すところなく、直撃し絶叫を木霊させ姿を強制的に表出させた。

 直後、蛇腹の中腹に突き刺さる真紅のガンブレード。

 蒼黒の竜機が下から上に一直線に斬り上げ飛翔した。

 ずるりと真っ二つに割れた巨体を見下ろし、狙い定めた銃剣から紋様、幾何学の円陣のフィールドが形成される。

 空が赤く明滅し、紅の閃光が幾重にも放たれ異竜種を貫くと魔法陣のような光球が包み込み、


 うねり巻き起こり、天を翔け昇る爆炎の柱。

 













 「うわっ!? なに、これ!!」

 「くっ! 機体が溶解しそう!!」

 「ふたりとも! ビットの後ろに隠れて!!」

 ユニスが複数のビットからビームシールドを展開し、防御陣を形成する。



 同時に紅蓮の熱波がすべてを覆った。