複雑・ファジー小説

Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.30 )
日時: 2014/05/18 16:17
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: f/UYm5/w)

 Act.9 死を運ぶ風、北方よりの使者

 
 シエルは眼を覚ました。

 極東支部のメディカル・ルームの病室、白い天井、薬品の匂い、最早、定位置となった窓際のベッド。

 もう見慣れた光景だ。

 まただ、また自分はやってしまった。

 思い出す、ジナたちに付き添われながら、なんとか支部まで辿り着いたが、早々に意識を手放してしまったのを。

 シエルがウロボロス極東支部に配属されてから数週間が過ぎた。

 だが、いざ戦闘になると力の抑えが効かないことが多々あり、他のドラグーンパイロットから巻き込まれるのを恐れられていた。

 先日の大蛇の異竜種相手程でないが、時折戦闘の際中に過去の記憶の欠片らしき残像が脳裏に過ぎる。

 ほとんど断片的で意味不明なものだが、稀に気になるものがあると、気分が落ち着かなくなり、竜種と戦う高揚感が合わさると感情のコントロールが難しくなる。

 そんな状態の自分と共闘など堪ったものでは無いだろう。

 実際、一緒に部隊を組むジナたちは、よく付き合ってくれてると思った。とても上手く対応してくれている。

 しかし、思う。

 このまま此処にいて良いのか、いずれ制御しきれない力で皆を傷付けてしまうかもしれない。

 それに失われている己の記憶。

 あの時、蘇えった不思議な光景。

 複数の騎士たち、迫り来る夥しい竜種。

 それに対峙する巨大な人型の物体。

 あれは、とてもよく似ていた、ドラグーンと。

 そして最後に出てきた少女。

 蒼黒の髪・・・それはまるで・・・。

 いや、まだ確信が持てない。ハッキリしていない部分が多すぎる。

 もう少し手掛かりが欲しいが、現状ではこれといって当てはない。

 今は、自分の力を少しでもコントロールすることに専念した方がいいだろう。

 それと、ジナたちには改めて詫び、礼を言おう。







 それから幾日が過ぎ、シエルは折り入って、話があるとしてカガミのオフィスに一人呼び出された。