複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.31 )
- 日時: 2014/05/16 17:16
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: /gz88uq5)
流氷が犇めく東海、オホーツクの北端。
シエルがアンフィスバエナを駆り、一面氷の海上を飛行する。
何故、こんな所に来ているのか。
それは今から、ウロボロスロシア支部の面々と合流するためだ。
何故、こうなったのか。
少し時間を遡るのだが・・・。
カガミは頭痛がしそうなこめかみを押さえ、デスクのモニターに映る銀髪の女性を見やる。
「・・・ファリ、どこからその情報を仕入れた? まさか、またロシア支部の工作員紛いの局員を忍び込ませたのか?」
モニター越しの女性は微笑を浮かべる。
「そんな面倒な真似、もうしないわよ。うちの子が感じ取ったの、『極東にとても強い力を持つ者がいる』って。隠しても駄目よ、詳しく教えなさい」
カガミは溜息を吐いて、少女シエルについて話した。
「・・・くれぐれも内密にしてくれ、何かしらエキドナが関わっている可能性があるからな・・・」
銀髪の女性ファリことファリオンヌ・ロッテンクラート、ロシア支部局長はしばし熟考する。
「ふーん・・・記憶喪失ね・・・。その子、何とかなるかもしれないわよ、多分だけど」
「なに!? 本当か!」
「うちの支部にはそういう『力』に詳しい子がいるから、力になれるかもしれないってこと。確証は無いけど、試す価値はあると思うわ・・・ただ、ね・・・ 」
そう言うと、ファリオンヌは少し困ったよう顔を曇らせる。
「何か、問題があるのか?」
カガミも神妙な顔付きで聞く。
「うーん、最近謎の組織勢力がゴビ砂漠付近で何か発掘作業をしてるって報告があったのよ。私は『九頭竜』の一派だと思うんだけど・・・」
「九頭竜、か・・・厄介な奴らだな・・・。それで、戦闘があったのか?」
「そういうのは今のところは無いわ。本当に発掘してるって感じだったわ。でも、もの凄く警備が厳重よ。気にならない? 一体何を探してるのかって・・・油田とかの資源の類じゃない、奴らが血眼になって探すとしたら、そうとうに『ヤバイ』ものでしょうね」
カガミは眉を吊り上げる。
「・・・もしや、タチバナが言っていた『アレ』のことか? エキドナが掘り出した旧世界の遺物・・・過去にシャオ・メイメイやヴェロニカ・マクヴァインのドラグーンと融合したという・・・しかし、二年前の戦いで『本体』と共に消失したと聞いたぞ・・・」
カガミの半信半疑な言葉に訝しげな視線を送るファリオンヌ。
「本当に消失したわけじゃないと思う。貴女も見たでしょうに、無数の流星が蒼空から落ちてきたのを。結局被害は無かったけど、不自然でしょう、あまりにも。それからよ、世界中で異竜種が確認されだしたのは」
ふたり共言葉に詰まり黙り込む。
二年前、世界を襲った未曾有の危機。
それは、一部の者たちにしか知られていないが、当時のバハムート、ヨルムガント、シェンロンの艦長たち、そして、それぞれの艦体に所属するドラグーンパイロットの少女たちによって未然に防がれた。
それを引き起こした首謀者とされるリヴァイアサン艦長はその艦体ごと行方不明。
それに関わった、利用された者たちは艦別に身柄を引き取られた。
すべての全容が謎に包まれた事件。
終わったはずだと、思っていたのが・・・。
しかし、現に竜種は世界中に溢れている。
数も、狂暴性も増している。
これは予兆なのか・・・?
そして、時を同じくして現れた謎の少女。
何を意味するのか・・・。
この後、シエルの件について段取りを大方決めて、本人を呼び寄せた。
そして、局長室のドアをノックする音が響いた。
「シエルだが、何か用だろうか」