複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.34 )
- 日時: 2014/05/24 16:32
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: zXm0/Iqr)
「よく来てくれたわ、私がウロボロスロシア支部局長ファリオンヌ・ロッテンクラートよ。貴女が極東の噂の秘蔵っ子ね、話は聞いてるわ・・・貴女の記憶のことも・・・」
レシエナに局長室へと案内されたシエルはロシア支部局長であるファリオンヌと対面していた。
ファリオンヌは温和な笑みを浮かべながらも、シエルを鋭く興味深そうに観察する。
敵になるのか、はたまた味方となり得るのか。
己の利に適うものなのかどうか・・・。
「シエルだ。既に承知の通り、わたしがここまで足を運んだ理由はわたしの失われた記憶、そして過去に繋がる手がかりを得るためだ。そのためには、あなた方に協力は惜しまないつもりだ」
シエルは値踏みするような視線に臆する事も無く早々に目的を告げる。
遊びに来たわけではない、少しでも過去に関する情報が欲しかった。
「シエルさん、焦らないでください。きっとアナタにより良い結果がもたらされるでしょう」
傍に控えていたレシエナが窘める。
「そうよ、焦りは禁物よ。逸る気持ちは判るけど、何事も『めぐり逢い』というものがあるの。いずれ、貴女が欲した答えが出るでしょう・・・それがどんな結末をもたらしたとしても・・・」
ファリオンヌが諭すように語る。
「・・・そうだな。少しばかり気が張っていたようだ。・・・それとカガミ局長から聞いたが、わたしの記憶の施術をする代わりに『交換条件』があるそうだな?」
シエルが幾らか肩の力を抜き、言う。
「ええ、ひとつ条件がを飲んでもらうわ。別に難しいことではないわ・・・ウチの支部は慢性的な人手不足なの。地上を徘徊する竜種を討伐するのが精々で、あまり遠方まで遠出できないのよ・・・そして、最近モンゴル近郊の砂漠地帯で正体不明の武力組織が発掘作業をしているのをウチの子が『感知』した・・・斥候からの情報では、何かしらの遺跡的なモノを、ということね」
「なるほど、わたしにそいつ等を探れというわけか。確かにわたしならば顔は割れてないだろう・・・それに、もしかしたら敵の中に『知り合い』に出くわすかも知れないな・・・いいだろう、その件、協力しよう」
シエルが腕を組み思案した後、了承する。
「話が早くて助かるわ。同伴はレシエナ、貴女がサポートして」
ファリオンヌが満足そうに頷き、レシエナに命じる。
「Да(了解)。シエルさん、僭越ながらワタシが目的地までご案内しましょう」
レシエナがお辞儀をする。
「・・・ついでに聞くが、戦闘に関してはわたしに一任させてもらうぞ。手加減は期待するな」
シエルは振り返り、ファリオンヌに確認する。
「ウチは情報さえ入手出来れば構わないわ。敵も恐らく抵抗するでしょうし・・・貴女のサジ加減でお願い」
「ああ、解った」
そう言い、シエルはレシエナと共に部屋を退出していった。
後に残されたファリオンヌはひとり虚空に向けて話しかける。
「・・・どうだった、ルルアルカ? 貴女の『眼』で視たあの少女の感想は・・・」
すると何処からか、ファリオンヌの脳内だけに聞こえる声が木霊した。
『・・・暗い・・・『深淵』が視える・・・それと、行く手を遮る大きな『壁』が・・・無機質で、虚ろで・・・それでいて、とても危険な『澱み』が渦巻いている・・・』
ファリオンヌはその声に頷き、しばらく無言になるとポツリと言う。
「・・・何かしら起こるわね・・・そう遠くない未来に・・・」