複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.35 )
- 日時: 2014/09/26 21:37
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: RfrjJukS)
極寒の雪景色、身を切る吹雪の冷地を疾走する二機のドラグーン。
すると視界は徐々にクリアになり、チラホラと緑地が顔を出し二体の竜機が暫く進むと青々と生い茂る緑の大地が出迎えてくれた。
白刹のドラグーン、ユランの飛翔スピードを緩め、低空飛行に切り替えるレシエナ。
「ここから先は例の武装集団の勢力下なになります。慎重に進みましょう、シエルさん」
振り返り、後方から追てきた蒼黒のドラグーン、アンフィスバエナを駆る少女に言う。
「ああ。分かった」
レシエナの後に続き、自機の速度を落として降下するシエル。
緑地を静かな駆動音が包み、滑走する二体。
森林がある場所まで来ると、伐採、細断されたであろう痕跡がみてとれた。
竜種の仕業ではない、明らかに人の手によるものだ。
「どうやら此処いら一帯は、その集団の資源物資調達場所になっているようだな」
シエルが辺りを見渡しながら言う。
「この辺りは危険な竜種群がたくさん生息する領域。それでも彼らは、そんな竜種を駆逐するだけの高い戦闘力を有しています。それ程までに彼らが欲する『モノ』とは何なのでしょうか・・・?」
先頭を走ながら話すレシエナ。
「・・・」
シエルは先程から感じていた。
ドクドクと高鳴る鼓動の心音。
近づいている、これは焦燥感?
いや、これは・・・。
————期待感。
緑地が開け、岩が剥き出しの荒野が現れ、黄色い砂塵を含んだ風が舞い込む。
荒涼とした砂陵。
アンフィスバエナのカメラ・アイが、その真紅の視線の先に『それ』の存在を捉える。
共鳴しているのだ。
コックピットでシエルが操縦桿のレバーを握る拳に自然と力が籠る。
此処にある。
まるで確信にも似た感情。
それは遥か彼方に置き去りにされてしまったもの。
己の現身。
————過去の欠片。
あるいは、その答えに繋がるであろう何か。
「到着しました。この砂漠地帯の中心部に彼らが活動する発掘現場が・・・シエルさん? どうしましたか?」
レシエナの言葉にゆっくりと閉じていた瞼を上げるシエル。
「・・・いや、何でもない。敵の活動拠点の規模を考えると、やはり戦闘は免れないだろう。数と地の利では此方が圧倒的に分が悪いのではないか?」
シエルが問うと首を振りキッパリとした口調でレシエナが答える。
「Нет.(いいえ)問題ありません。ワタシが敵を引き付けます。その間にシエルさんは中心部まで突入してください」
「囮になるのか? 勝算は? まさか無策ではあるまいな」
シエルが訝しげになる。
「大丈夫です。ワタシも多少なりとも特殊な『力』を持っています。シエルさんは彼らの目的、狙いが何であるのか突き止め、出来るのであれば奪取をお願いします」
「・・・まあ良いだろう。敵が何であれ、邪魔をするのならば排斥するまでだ・・・」
ロシア側にも思惑があるだろうが、そんなことはどうでもいい。
疼く。
蒼黒の狩人が戦場に躍り出たいと。
今か今かと、待ち望むがごとく。
自身の心を映し出す水面のように。
求めている。
戦いを————。