複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.36 )
- 日時: 2014/11/01 20:51
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: nH0S84tQ)
Act.11 埋もれた記憶、甦る追憶
砂丘の中心。
その位置する多数の重機と建材物が並ぶ発掘現場。
それは明らかに不自然な遺物だった。
いまだかつて、このような『モノ』が発見されたなどと例を見ない。
表体は金属のようでいて、生物の質感を思わせる未知の物質。
うずくまる様に己の躰を抱きしめる半ミイラの人型の巨大物体。
まるで太古の時代、神話や物語に登場した『巨人』の標本だ。
幾重にも鎖で吊るされ運ばれる謎の発掘物。
迷彩色の軍服の上着にダメージカットジーンズのショートパンツを着こなした少女リュー・イ・シェリは訝しげに視線を投げ掛けていた。
組織『九頭竜』の筆頭であり、九幹部衆の一員である自分が直々に任せられた仕事が、この得体の知れない『何か』の発掘だった。
「・・・総頭は一体何を考えている? やはりあの企業と結託したのは早まった選択なのではないか?」
どこからかやって来て技術と資金を惜しげも無く提供してきた妖しい企業団体。
————エキドナ。
彼らと協力することに反対だったシェリは、しかし他の幹部の賛成多数により結局のところ議決を余儀なくしてしまった。
奴らを信用してはならない。
そう告げる自分が心の中にいる。
己の勘が外れた事は無い、ただの一度も。
これまでそうして生き残ったからだ。
組織として走り始めたが、物資不足で脆弱だった九頭竜をここまで援助し盛り上げて彼らに何のメリットがあるのだろうか。
嫌な予感がする。
この発掘が、この先の、自身の、組織の命運を左右するものになる可能性を考え渋い顔をするシェリ。
だが、それ以上に、『コレ』が人が触れるべきではない禁忌の象徴のような気がしてならない。
そんな空気が、危険な予兆ともいうべき感覚がピリピリと場に満ちていた。
何者がどういった目的で『コレ』を創り上げたのか、自然発生したとは思えない人工的な作為が垣間見える。
竜種にも見えるが、ドラグーンのようにも視える。
エキドナの研究者連中はこれは『始まりの仮初』の一体だと言っていた。
「・・・オリジナルとも言っていたな。一体なんなのだ? コレは・・・?」
搬送される重々しい異物を睨む。
その時突如として現場の雰囲気が変わり、急激に殺気だったものに変貌する。
幾重にも重なる怒轟と破砕音、そして銃撃とドラグーンの駆動音が鳴り響き、天幕の向こう側で戦闘が起きていることが分かった。
「またか。こんなときに・・・。敵は恐らくウロボロスのロシア勢力だろう。いつもの様子見の牽制だろう」
時折こうして様子を探ろうと斥候がやって来るのだが、どうやら今回は少し違うようだ。
何人かの雇われた現地人が混乱する中、組織の人間が慌ててシェリの下へ駆け込んでくる。
「て、敵襲!! 敵はここから僅かに離れた場所で護衛部隊と接触! 戦闘中!! すぐに応援の後続隊を・・・」
報告する兵にシェリはつまらなそうに視線を一別した後、別方向を向いて呟く。
「それは囮だな、見え透いた真似を・・・。露西亜の狐どもが考えそうなことだ。・・・狙いは恐らく・・・」
そう言って天幕から離れると、近くの作業員たちに指示を出す。
「私のドラグーンを起動準備させろっ!! 敵は本陣に直接乗り込んでくるぞっ!!」
そして口元を歪ませつつ、これからの事に思案を廻らせる。
この先、どう転ぶのか。
見極めなくてはならない。
自身と組織の行く末を含めて。