複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.37 )
- 日時: 2014/11/01 23:41
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: nH0S84tQ)
「ホールドニースメルチッ!!」
両腕部装甲の射砲「スネラチカ」から風の竜巻が射出展開し、向かって来る汎用機ドラグーンを複数巻き上げるレシエナのドラグーン、ユラン。
そして空中に放り出されたそれらを下にいる他のドラグーンの頭上に叩き落とし諸共に激突させて破壊する。
周囲を取り巻く発掘現場の警護竜機は一定の距離を保ちながらも手を拱き、この白い襲撃者の風を行使する攻撃に牽制され不用意に近づけずにいた。
「さあ、遠慮はいりません。いつでも何処からでもかかって来てください」
飄々と挑発するレシエナに業を煮やしたのか、後方から増援部隊のドラグーンが続々と押し寄せてくるのが見えた。
「・・・どうやら、うまい具合に戦力をこちらに引き込むことが出来ました。後はまかせることにします、シエルさん。御武運を」
レシエナは射砲を集結する敵部隊に狙い定め、先程別行動に移った少女の無事を密かに祈った。
砂塵の飛礫を上げてスラスターを加速させる蒼黒のドラグーン。
並ぶ重機と建材物の合間を縫うように抜け、一気に目的地へと直走る。
「感じる・・・。この感覚、わたしは知っている。お前もそう感じるのか? アンフィスバエナ」
シエルは走駆させる機体と共に胸の中、奥底へと誘う共鳴感のような何かを感受していた。
この先に間違いなく、ある。・・・でも、それは漠然とした不安でもあり、期待を伴う高揚感をもない交ぜにした奇妙なものだった。
まるで開けてはならないパンドラの箱の蓋に手を掛けている、そんな風にふと、思ってしまう。
だが記憶を取り戻す手がかりが目と鼻の先にあると本能とも呼ぶべき意志が告げるのだ。
進め、と。
さすれば道は開かれん、と。
竜機を操縦しつつも思考の迷路に捕らわれそうなシエルの前に突如何体もの汎用機ドラグーンが滑走し現れ、手に持つ自動小銃を此方に向けてきた。
放たれる機銃の一斉掃射。
「・・・そんなもの、掠りもしない。アヴァドゥームッ!」
シエルが叫ぶと瞬時にアンフィスバエナの右腕に顕現された真紅のガンブレード。
横薙ぎに一閃される赤い軌跡。
途端目前で爆破拡散される無数の銃弾。
同時に爆煙から抜け出る蒼黒の機体が紅い眼光を燈らせ、居並ぶ汎用機ドラグーンの眼前に躍り出る。
「————散れ、デッドエンドスラッシュッ!!」
目にも止まらぬ速さで数体の横を通り過ぎるアンフィスバエナ。
時にして僅か一時も経たぬ間、機体を幾重にも寸断され緩やかに分解され果てる敵ドラグーン。
払うように銃剣を振るう竜戦士。
その後方でしばし遅れて大爆発。
轟々と燃え上がる残骸の焔。
「わたしの邪魔はさせない。例え誰であろうとも・・・」
誰ともなく呟くシエル。
表情は何処か苦しそうにも見えた。
「ほう。貴様、大した戦闘力を持っているな」
「!!」
アンフィスバエナの上空を覆うように黒い影が埋め尽くす。
咄嗟にバーニアを逆噴射させ後方へと飛び退くシエル。
ほぼ同時に落ちる巨大な重影。凄まじい地響きと砂埃を巻き起こして降突する。
黄砂が舞うヴェールの影に明光する巨体の双眸。
突如、砂幕を切り裂き、突き破り突貫し伸びる巨影の刃。
襲い掛かるそれを真紅の銃剣で受け止めるアンフィスバエナ。
響く鈍い金属音。
ギリギリと鍔迫り合い押し合う。
「貴様は誰だ? 一体何者だ?」
砂の暗幕が降り、落ち着いた少女の声と一緒に巨体が姿を露わにする。
朽葉色の巨躯。両手に携える己の身の丈に匹敵する禍々しい巨大な鎌。重厚な装甲で身を固めた屈強なドラグーン。
巨体に似つかわしいパワーで構えるバトルサイスに力を籠めるコックピットのシェリ。
その重厚な力圧に臆することなく徐々に押し返すシエル。
互いに刃を重ね睨み合う。
「私のククルカンと力比べをする気か。・・・面白い。返答は期待していないが一応聞いておいてやるぞ? 賊め。目的は何だ」
「・・・答える義理は皆目無い。だがひとつだけ言わせて貰う」
コックピット内のシエルは静かに、しかし力強く言う。
「わたしの前に立つ者は何人たりとも斬り伏せるっ!!」
重高音を震わせ弾き反されるバトルサイズ。
稲妻の如き閃き。
紅い剣閃が迸った。