複雑・ファジー小説
- Re: 『竜装機甲ドラグーン』 テラバーストディザイア ( No.5 )
- 日時: 2014/11/17 20:44
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: Zf1WUFx6)
Act.2 漂流 そして遭遇
極東、日本海付近。
青いドラグーン、『清龍』と、藤紫色のドラグーン、『紫龍』が海上を飛行している。
「それで、ドラグーンの救難信号がこの近くにあったていうの? ジナ」
「うん。そうだよ、ケイ。一瞬だったけど」
紫龍を操縦する少女、ケイ・キサラギがわずかに訝しげに問う。
応じるのは青い竜機を駆る少女、ジナ・ジャスティンである。
「アタシとユニちゃんが今朝方、哨戒任務で日本海近郊を回ってたら信号をキャッチしたんだ。あれは間違いなくドラグーンの機体反応だった——でも直ぐ消えちゃったのが不思議なんだよね」
「はい。まるで、助けを求めてるような、そんな感じがしました」
後方から輸送補給機のパイロット、ユニス・ミルがジナの意見に同意を示し、補足を加えた。
不確かな情報であるが、彼女たちが嘘を吐く訳は無いので本当なのだろう。
「・・・だとしたら、強進国のドラグーンかもしれないわね。でもどうしてこんな近海まで来たのかしら・・・?ともかく、急いで現場に向かってみましょう。もしもそのドラグーンの持ち主が生きていて、強進国勢力やエキドナなどに捕まりでもしたら厄介だから」
ケイが思案顔で言う。
「わかった。急ごう」
「了解しました。
ジナとユニスが頷いた。
ジナたちが所属している対竜種防衛組織『ウロボロス』極東支部は、世界を席巻する強進国の過激派組織『九頭竜』や地球制服を企む武装勢力『ジャバウォック』に対抗するため、協力関係を結んでいる民間団体である。
このような状況に至るまでには、様々な複雑な事情と経緯があったのだが、それは後にしておこう。
「あっ!」
「どうしたの、ユニちゃん?」
「見つけましたっ、四時の方向です!」
おそらくこの中で一番探知能力に優れているであろう、ユニスが異変を察知した。
一足遅れてジナとケイのドラグーンのレーダーマップが僅かな機体反応を捉える。
「行ってみましょう、ジナ。戦闘になるかもしれないから気を付けましょう。ユニスは周囲の竜種警戒を、それと救難者の輸送準備をお願い」
「うん、了解だよ。ケイ」
「はい、了解しました」
ジナとケイのふたりは反応のする場所に機体を向けた。
岩礁らしき浅瀬に、座礁したように機動兵器の欠片と脱出ポッドが浮かんでいた。
乗降用ラダーを駆使してコックピットから降り立つジナとケイ。
その背後で輸送機が待機する。
「これは、ドラグーンの緊急脱出ポッド・・・」
「周りに散乱している機体の欠片からすると、汎用型みたいだね」
「はい。どうやらなんらかのトラブルによって脱出を余儀なくされたようですね」
ケイの呟きにジナが感想を述べ、ユニスが補足する。
「生命維持機能は・・・どうやら生きているみたいね。どうする? 人の気配はするが・・・」
「アタシが開けるよ。ちょっと離れていてね」
ジナが、よいしょとポッドのハッチに手を掛ける。
「ジナさん、ケイさん、気をつけてくださいね」
ユニスが輸送機から声をかける。
「わかってるわ。・・・油断はしない」
ケイは腰から下げたホルスターから銃を取り出し、構える。
幸い非常レバーは生きており、ハッチの開放に問題はないようだ。
ダメージをさほど受けている様子は無く、原形をほぼ留めていた。
「開けるよ?」
銃を構え無言で頷くケイ。
ジナが緊張した面もちで、レバーを引いた。
「あっ!?」
「これは・・・!」
「綺麗な・・・女の子、ですね・・・」
その光景に彼女らは驚き、目を見張った。
彼女らの目の前には、ほとんど裸の美少女がパイロットシートに力なく身体を預ける姿だった。