複雑・ファジー小説
- Re: 君を壊してあげよう。 ( No.1 )
- 日時: 2014/03/30 15:26
- 名前: 貝塚 (ID: gOBbXtG8)
午後21時現在、雨の音がし始めた。
雨粒と木の幹が窓硝子を叩きつけていて、その具合で外の景色を見ずとも、外がどの様な様子かが分かる。
僕『雨宮竜胆』は、パソコンの画面と睨めっこしながらそんな外の様子を察していた。
きっとかなりの大雨で、風もそれなりに強いだろう。それは、この場所で長く暮らしていたからこそ分かる。
長いとはいえ、まだ十数年しか立っていないけど。僕は高校生だし。それも、まだ二年生だし。
そしてこの時間帯にこの天候となると、決まってある人物が僕の家を訪ねてくる。
————パソコンをスタンバイ状態にさせながらそんなことを考えていたとき、丁度玄関の呼び鈴が鳴った。
「はいはいっと」
僕の部屋は二階で、一階には誰もいない。両親は出張中だ。
いつも仕事ばかりしているが、大丈夫なのか。時折不安になりつつも、大人しく僕はほぼ毎日一人で暮らしている。
だから、誰かが訪ねてきても両親には何も言われない。安心できる。
僕は玄関につくと、鍵を開けて焦げ茶色のそれを開けた。
訪ねてきた人物は、やはり予想通りの人物だった。
「竜胆君、今いいかな?」
僕より少し身長の小さい、同じ高校で同じクラスの女の子『如月玲奈』がやってきた。
さらさらとした長い黒髪から滴る水をハンカチで拭きながら、僕を見上げてくる。
この子は僕の愛人で、この子がいつもこのタイミングで訪ねてくる人だ。
「上がって」
僕はそれだけ言い残して、バスルームへフェイスタオルを取りに走った。
◇ ◇ ◇
「ごめんね、いつも世話になっちゃって」
「よく言うよ。彼女っていう立場の人間が訪ねてきたら、返すわけにも行かないでしょう」
「あはっ、構ってほしいのばれた?」
「お見通し、だよ」
その後、僕は自分の部屋に玲奈を招き入れた。
少し寒かったのか、僕が入れた珈琲のマグカップを両手で包んで暖を取っている。
秋も終盤だし、仕方ないとは思うけど。
僕はあれから、こういうときのために玲奈の服を何着か部屋に置いている。
私服に制服、寝巻きを二着ずつ。下着は流石に置いておくわけにはいかないと思ったけど、玲奈の希望で置いてある。
現在玲奈が着ているのは、僕のクローゼットから引っ張り出した彼女の私服。
さっきまで着ていた水色の制服は、現在一階の洗濯機で洗濯されている。
黒く上質なソファに座る僕の隣で、玲奈はずっと僕に寄りかかっている。
重いわけではない。寧ろ軽い。だけど、こういうときだけはちょっと鬱陶しい。
「毎日会ってるのに、まだ構ってほしいの?」
「だって、全然話してくれないじゃん」
「それは……小恥ずかしいというか」
「でしょ? だから、こういうときだけでも一緒にいたいの。口実がばれたのはあれだけど……」
「——はぁ……仕方ないなぁ。じゃあ、一緒にいてもいいよ」
「ありがと!」
「うわ!? ちょっと、急に抱きつくな!」
玲奈は学校でとても有名だ。
性格の良さ、成績の良さ、生徒会長という立場、容姿の良さ——どれを取り上げても人柄は上等。
そんな彼女と結ばれたのだから、僕は本当に幸せ者だ。
向けられている目が、どのようなものか分かるまでは————