複雑・ファジー小説

Re: Heaven or Hell? ( No.30 )
日時: 2014/04/12 11:30
名前: 翔 (ID: XWukg9h6)

扉を開けるとそこは案外一般的な部屋だった。
右側にシングルベット、左側に大きな棚。
奥の真ん中に丸い小型テーブルとパソコン。
強いて驚いたのは…棚に入っている道具の数と種類。
多すぎて何がなんだか分からない。

いきなりお目当ての物を探すのもつまらないので、もう1度頭の中を整理することにした。

まず"崩れを揃える"ということは、この見た目は全部真っ白で同じにしか見えないルービックキューブだが、何か違いがある筈だ。
白は白。何か色が少しでも混じればそれは白ではなくなる。
しかし、油絵の世界、及び油絵の具では白が数種類存在する。
それを俺が知っている範囲で紹介しようか。

鉛白シルバーホワイト、これは古くからある白色顔料でどの時代においても重要視されてきたホワイトである。

酸化亜鉛ジンクホワイトは冷たい印象のホワイトで隠蔽力があまりなく、混色の際ににごりが少ないので扱いやすいからなのか、日本で人気のある絵の具である。

酸化チタン(チタニウムホワイト)、これといった欠点をもたないホワイトで、 工業的には最も需要のある白色顔料。
ただ、絵具としては隠蔽力と着色力がたいへん大きく、混色るとやや濁りやすいので、扱いにくいとされる。

あとは、パーマネントホワイトというのがある。
これは酸化チタンに体質顔料を加えて、着色力と隠蔽力を和らげたもの。初心者用セットに組み込まれていて一般化するようになったが、黄化の程度はチタニウムホワイトよりやや 強くなる。

まぁこんな細かいことはどうだっていいのだが…
ようは白にも種類がある。
そしてこれらは"顔料の違い"である。
見分けがつかないのだ。見た目には。

白いキューブをもう1度よく観察してみる。
普通ブロックには保護用の透明シールがあるものなのだ。
しかしこのキューブにはそれがない。
油絵の具は乾性油を使う為、表面に油膜が出来てコーティング代わりになる。
それに水彩絵の具やマジックペンと違い、色の食いつきもいい。
まさに合理的なのだ。


さて…白の紹介はここまでとしよう。

マスターはわざわざメッセージが隠されている事を教えてくれた。
つまりこの姿から変化するのではないか。


やはり…落ちついて考えてもこの考えに至った。
自然と口角が持ち上がる。
それと同時に棚の中を漁る。あるものを見つける為に。

それからどれだけの時間が経ったのかは分からない。
案外早く見つかったような気はする。
あまりに嬉しかったので思わず思ったことをそのまま声に出す。

『あった、油絵の具と筆』
やっと自分の推測を確信できた俺は、胸を撫で下ろした。
先程まで激しく活動していた俺の心臓も落ちついたようだ。