複雑・ファジー小説

Re: 銃声と道化師 ( No.6 )
日時: 2014/07/05 14:54
名前: ワッフル ◆uigiXIaCSo (ID: gOBbXtG8)

 あれから2年もの時が流れ、奏ちゃんとは音信不通になってしまった。
 暇さえあればメールを送った。でも、着信拒否はされてないみたいだけど、返信は一向に来ないばかり。
 電話もかけたけど、全然出ないばかり。まさに、電話にでんわ、だ。
 奏ちゃん、今頃どうしてるのかな————

 ある日、進路の選択に追われる日々を送っていると、一通のメールが来た。

 奏ちゃんからだ。
 でも、私はメールボックスを開かなかった。

 奏ちゃんが、滲んで見えないんだ。
 愛していた奏ちゃんが。全霊をかけてでも会いたいって願った奏ちゃんの姿が。
 滲んだシミはやがて、汚れとなって落ちる。それと同じで、私は奏ちゃんの姿が滲んでいる。
 もう、忘れかけているのだ。

(忘れられたら、どれだけ楽になれるんだろう……)

 色々思いつつも、私は好奇心半分にメールボックスを開いた。

〔そんなに会いたいなら、お前がこっち来いよ〕

 その一文を見た瞬間、私の奏ちゃんに対する感情が一気に変化した気がした。


   ◇ ◇ ◇


 更に時は流れて冬休み、私は受験勉強もせずに電車に乗っている。
 雪の降る地へと向かうので、服はふわふわなコーデで決めてみた。
 帽子も被って、マフラーもして、カイロも持ってと、完全な防寒対策をして。

 電車は何度も乗換えをした。
 バスにも乗った。バス停からも、しばらく歩いた。
 私がやってきたのは、山間部の田舎町。
 それも、更にそこから少し離れた山小屋のようなところだ。

 私はインターホンを押す。
 私は全く知らないこの場所に、誰が住んでいるのかを知ってる。

「おぉ、怜奈! 会いに来てくれたか!」


 ————出てきたのは予想通り、奏ちゃんだった。