複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.11 )
- 日時: 2014/04/18 09:10
- 名前: 姫凛 (ID: KNMXbe0/)
+弐羽 探索+
メシアの生き残りが監禁されている部屋を出て行った後、我は休憩所ゆっくりと体を休めているとロザリーから通信が入った。
奴から通信が入るなど…。
「明日世界が滅ぶのか?」
「なによっそれーー!!叢、笑えない冗談はやめなさいよっ!!」
別に貴様を笑わせようとして言ったのではないのだが…。
ロザリーは頭がキーンと痛くなる、高いトーンでキーキー猿のように鳴いている。あぁ…五月蠅い。
「それで、用はなんだ?」
「あっそうだった…」
我が問いかけるまで自分がなんの為に電話をかけて来たのか忘れていたのか?なんなのだ。こやつは…。
「アナタ最近調子に乗ってるんじゃないのっ!?」
「はぁ?」
何を言っているんだ。こやつは?
いつ我が調子に乗ったと言うのだ。我はいつも命令された事を忠実に行っているだけだ。
「とぼけんじゃないわよっ!!」
「どぼけてなどおらぬ。貴様の勘違いだ」
「違うわ!アナタ、メシアの生き残りを捉えてバーナード様に気に入られようって魂胆ね?」
あぁ…そうゆうことか…。
ロザリーの奴は心の底からバーナード様様を愛している。一人の男として。
だからこそバーナード様の側近の我が気に食わないのだろう。
我もバーナード様の事は敬愛しているしな。
「そんな事、考えてなどいない」
「そ、そうね…。そんな事しなくても、すでにアナタはバーナード様のお気に入り…」
通信端末の向こう側でロザリーがもごもごなにか言っている。
何を言っているのだ?よく…聞こえない。
通信端末をもっと耳に近づけようとしたその時だった。
「ムラクモさーん」
誰かに肩を急に掴まれたのだ。
通信端末はその時に、なにか察したロザリーが電源を切ったようだ。
昔から奴は勘だけは鋭い女だった。
「ひゃぁぁぁ!!?」
「わぁっ!?」
不覚にも我はそれをお化けだと勘違い…いや別に怖かったわけではない。
殺そうと…いやお化けはもう死んでいるのだったな…。じゃあ、倒そうとして飛び上がり、驚いたふりをしたのだ。ふりを、したのだ!!実際には全然驚いていないっ!!
お化けよっ!成敗してくれるっ!と振り返るとそこには…
「…ぁ、あぁ…ルシア様」
監禁しているはずのメシアの生き残りが立っていたのだ。
何故だ?部屋の鍵はしかっりとしめたはずだぞ?なのに何故、奴が今ここに、我の目の前に立っているのだ?
「ご、ごめんなさい!驚かせるつまりはなかったんです。ムラクモさんを見つけたからつい…」
どうやら我が叢だと気づかれていないようだ。
こやつは…素直というか…純粋というか…なんだか見ていると胸が苦しくなる…。
やはり我は何か、悪い病気にかかってしまったのか?
「…ってまたですねっ」
また?またって何がだ?
……あ。
「そ、そうですね。たしか前にもこんなやり取りを…」
心当たりはある。だがそれを認めたくない。
我は適当な愛想笑いでその場を乗り切ろうとする。今ここでかやつに我が叢だと知られるのはこれからの任務に支障ををきたす事となるからだ。
乗り切ろうとしたのだが…。
「あっ、こんなところで笑っている場合じゃ、なかったんだ!ムラクモさんっ」
「は、はいっ!」
なっななななんだっ!?
何故、こやつは我の手を握るっ!?どうしてこんなっ、まっすぐな視線で…我を…見つめるんだ…。
ま、まさか…これは…こ…
「ここは危険です。一緒に逃げましょう!」
「へっ?」
はい?なんと言った?思考が停止し、よく聞こえなかった。
「とにかく、一刻も早くここから逃げましょう!」
なんと言ったのか聞こうとしたが、ルシアは強引に我を何処かへ向かって引っ張って行く。
なっ、なんなのだっ、こやつはっ!?理解不能だ!!
どうして…我は連れ出されようとされ…嬉ししいのだ…何故…どうして…。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.12 )
- 日時: 2014/04/20 12:56
- 名前: 姫凛 (ID: 8.dPcW9k)
「この造り…まるで迷路だよ」
ルシアは我の手を掴み引っ張りながら闇雲にやる気続けている…。あぁ、我は一体何をやっているのだ。敵に手を引っ張られて己の管轄の牢獄をただ歩き続けているなど……こんな姿を誰かに見られたりしたら……殺すしかないではないかっ!ただでさえ、手ごまが少ないと嘆いているのに…。
はぁ…あっ、ルシアが我が黙り込んでいる事を不信がっている。なにか答えねば…
「そ、そうですね。敵からの侵入も脱出も困難な構造になっていますから…」
「そうなんですかっ!?このまま…進んでいたらいつか、見張りの人に見つかっちゃいそうだな…」
「……」
あぁ、そうだな。このまま闇雲に歩き続けたら誰かに見られてしまうな。…口封じをせねば。
ある意味、こやつは勘が鋭い。とゆうのか?
闇雲に歩いているだけだと思っていたら、見張り兵達の休憩所にたどり着いた。
くっ、状況がさらに悪化してしまったではないかっ!誰もいないだろうなっ!?
と願いながら部屋を覗いてみるが…チッ、いた。タバコを吸い、楽しそうに雑談を楽しむ馬鹿共が…奴らサボり組か?
…後で始末しておかねばな。
「はぁー、やになっちゃうなー」
「だよなー。少ない給料しかくれないくせに、仕事は一日二十時間もさせられるんだもんなー」
「寝る事しかできねーよなー」
「(休みがあるだけでもっありがたいと思え馬鹿共っ!!我なんか…寝る暇も…)」
「………」
「なぁ、逃げ出さないか?」
「ばっ、お前そんなの誰かに聞かれたらどうするっ!?即刻討ちきりだぞっ!!」
「大丈夫だって、今ここには俺たちしかいねぇーって」
なにっ!?逃げ出すだと!?おのれ…バーナード様の前でやったあの忠義の石は嘘だったと言うんかっ!?許せん…あやつら…絶対に許さんぞ。
怒りで拳が震える。く、震えるなっ、ルシアにばれたらどうすのだっ!?落ち着け我よっ、落ち着くのだっ。
「おれっ、あいつらから聞いたんだ。この椿の牢獄の何処かに隠し階段があってその先が外の世界につながってるって…」
「お、お前。あんな奴らの戯言を信じるのかよ!?」
「(隠し階段!?何故奴らが知っているっ!?あれの存在は…ロックスの馬鹿と我しか知らぬはず…なのに何故っ!?)」
「………」
「っ!?」
ルシアの瞳…やる気だ。こやつは隠し階段を探し出し、此処から脱走するつもりだ。
正気の沙汰とは思えぬな。あそこは魔物の巣窟、決して人が立ち入ってはならぬ場所。我ですらようがない限り立ち入らない禁断の場所だ。
「…行くのですか?」
とルシアに聞いてみたのだが、何故だ?何故我の声は震えているのだ?
何故怖いと感じているのだ?何故ルシアが死んでしまわないかと心配しているのだ?何故…奴が我の前からいなくなることがこれほどまでに恐ろしいのだ?
我はどうしてしまったのだ…?この感情は一体…なんなのだ?
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.13 )
- 日時: 2014/04/23 08:38
- 名前: 姫凛 (ID: ZsN0i3fl)
「…うん。みんなを探しに行かないと…それにムラクモさんをこんな所に置いてなんていけないよ!」
「ッ!?」
な、なんだっ、今のはっ!?体に電気が走ったぞっ!!?
それに…何故、我の体は熱くなっているのだ?ほててってるのか?いやそんな馬鹿な事あるわけない。そうだ、他の奴ならいざしれず我が、この我が…ありえん。それは、絶対にありえんっ!!
じゃあ…一体…この感情は…なに?
あ、いかんっ!またルシアが我の行動を怪しく不審に思っている。な、何か言わねば…。
「ぁ…隠し階段は…あっちです」
咄嗟に絞り出した声は震え小さなものだった。
我は自分でも驚愕した。普通な声で普通に言ったつもりだったのに、今我が出せる精一杯の声が…これなのか。
「えぇっ!?ムラクモさん、知ってるの!?」
気を使っているのか、それともただの阿呆なのか、ルシアは普通に我に接し驚いている。
こやつはお人好しだからな、きっと前者の方だろ。敵に気を使われるなど情けないな。
「…でもあそこは、魔物の巣窟となっています。それでも…」
せっかく気を使ってくれたのだ。我も社交辞令で一応、気を使い心配する素振りをしてやろう。
「それでもだよっ!大丈夫、君のことは僕が守るから!!」
「ッ!?」
ぁぅぅ。本当になんなのだ、この感情はー!!
胸が。締め付けられるように痛い。苦しい。でも温かくて心地よい。
なんだ…どうした…我の体は…どうしてしまったのだ?
ふーはーと深呼吸し気持ちを切り替え息を整えた後、
「わっ、わかりました。…でも、私の仕事は、人を守る事。貴方を守る事なんです。互いを守るって事でいいですか?」
と聞いて見ると案の定ルシアは
「うんっ!よろしくね、ムラクモさん」
眩い笑顔を我に向け答えた。
だからっ、その顔止めろっ!!はぁ…はぁ…胸が…苦しい。締め付けられる。くそっ、やはり早く始末しておけば良かったのか?欲をかいてもろくなことがないと言う事なのか?くぅ…。
ルシアにばれぬよう胸を押さえ、一通り苦しんだ後、くるりと周り何事もなかったような顔をし、
「は、はいっ」
とごく普通に答えた。
我の演技力は皆から猿並だとよく言われておるから、こんなので奴をだませるかどうか正直わからない。
たぶん、きっと何処かでぼろが出てしまうだろう。…その時は。
ルシアを誘導しながら、椿の牢獄内を歩く。此処は我にとって庭みたいな物だ。からくりの仕掛けも全て熟知しているし、迷路のようなだと言われる通路も全て熟知している。だから、あの部屋にまでたどり着くのは難しい事ではない。
あの部屋とは椿の掛け軸がかかった、他の囚人達の部屋とは全然違う、豪華絢爛の部屋だ。
この部屋は主に、バーナード様が此処に視察しに来た時などに使われている。
普段は脱走を企てる者以外、誰も寄り付かない開かずの間とも言われているな。
我も滅多な事がない限り此処には近寄らないようにしている。
「………」
部屋の一番目立つところにかかっている椿の掛け軸をめくり上げる。
「…隠し階段だ」
そうすると奥深く地下へ、続く階段が現れる。という仕組みだ。
階段の奥の方は暗くてよく見えないな…電球がきれたのか?後で変えておかないとな。それと、懐中電灯を忘れずに持って降りないとな。我は暗闇なぞ全く持って問題ないのだが…ルシアは、慣れていないかもしれないしな。怖がるかもしれないしな。一応な、一応!
ん?そういえば今日はいつも以上に、化け物達の声が五月蠅いな。
どうやら相当腹を空かせているようだ。今此処に入れは、奴らにとっては何百年ぶりの飯にありつける、と言う事か。まぁ、そう簡単に飯にはありつけないと言うことを教えてやろう…。
「此処の魔物は、今まで貴方が戦ってきた魔物とは比べ物にならないくらいに強いですよ。気を引き締めて」
「うん。ムラクモさんもね」
「…はい」
やはりルシアの意思は変わらずか。貧弱そうな見た目をしてる割に、根性はあるようだ。まぁ…その…嫌いではないな、根性がある男は…。
ってまた、余計な事をっ!!集中しろっ!此処ではたった一瞬の油断が命取りになる。それは我とて例外ではない。気を引き締めねば…。
我らは地下へ続く暗闇の階段を下りて行った。
我は知らなかったのだが、実は尾行されていたようだ。
く、我としたことがっ!!何故気づけなかったっ!?いつもなら匂いや気配ですぐわかるのに…神経を研ぎ澄ませていなかったからか?ま、なんにせよ、我を尾行するとは良い度胸だ、正々堂々真正面から相手をしてやろうではないかっ!!
「へぇ〜、おもろそうやったから後付けてみたら、なんや楽しそうな事になっとるなないの。くひひひっ」
ムラクモ達を付けていた黒い眼帯を付けた出っ歯の男は、ニタニタと笑い独り言を言っている。
今此処には誰もいないが、もし誰かいたらたぶんすぐに警察に「すみませんっ、変な人がいるんですけどっ!」と不審者扱いされ通報されただろうに……。
出っ歯の不審者のような男は、ムラクモ達の後を追いかけ、隠し階段をルンルンとスキップみたいな足取りで下りて行った。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.14 )
- 日時: 2014/04/26 15:35
- 名前: 姫凛 (ID: WfwM2DpQ)
+参羽 脱出+
「はぁぁぁぁ!!」
「ふんっ!」
「ゲシャァァァァ!!」
階段を下り地下へ足を付けた途端、魔物共が襲い掛かって来た。
我が地下へ続く道をルシアに教えた瞬間から、すでに気づかれていたとゆう事か。やはり改造された魔物だけはある。
魔物達は次から次へと現れるが、そうたいした物でもなかった。昔はもっと倒すのに手こずっていたと思ったのだが…我も知らぬ間に強くなっていたようだ。
「はぁっ!」
「ブシャァァ!!」
一撃で魔物を仕留めてゆく。
一匹倒すのに一秒もかけているようでは、逆にこちらが一秒で殺れる。食うか食われるか、殺すか殺されるか、の世界我にとってはそれが日常だった。
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫ですかっ?」
「うっ、うん」
だがそれはルシアにとっては日常ではない。効率の悪い戦い方で、一体倒すたびにハァハァと息を切らしている。あのままでは死ぬぞ。
仕方がない…手を貸してやるか…。
「こちらにっ!」
ルシアの腕を引っ張り、今立っている場所から三字横に移動。壁に隠してあるスイッチを起動。
すると壁が動き出し魔物達をグシャッと挟み込み一つ通路を塞ぐ、壁の向こう側から沢山の魔物達の悔しそうな鳴き声が聞こえてくる。
地下もまた我の庭の様な物。
何処にどんなからくりの仕掛けがあるかなど熟知している。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.15 )
- 日時: 2014/04/30 10:09
- 名前: 姫凛 (ID: pgLDnHgI)
「隠し階段の次は…隠し壁?」
「はい。此処は最高技術を持ったからくり職人達に造らせた、からくり牢獄なんです」
「へぇ…」
ルシアは見る物すべてが珍しい何を見ても興奮する子供みたいに目を輝かせて驚いている。
…可愛い…かも?い、いや、こんな時になにを考えているのだっ!?集中しなければ、魔物に食われるぞ!平常心、平常心、落ち着け…落ち着くんだ…。
落ちつけと自分に言い聞かせ気分が落ち着つくと、我はルシアの腕を握ったまま引っ張り次の仕掛けがある場所へと案内しようと…
「次はこちらにっ……うっ!」
「ムラクモさんっ!?」
したのだが、腹に何か衝撃が…。痛みに苦しみながら、地面を見ると、重い分銅が落ちていた。先には鎖で繋がれている…これは、鎖鎌か?
あまりの痛さに思わず、腹を抱え苦い顔でしゃがみ込みこんでしまった。
分銅ゆっくりと飛ばされてきた方向から、引きずられながら回収されている。引きずられている方向を見てみるとやはり
「ヒドイやないか〜、ムラクモちゃ〜ん」
ロックスがケタケタと気持ちの悪い絵笑顔で近づいてきたのだ。くそう、血が出過ぎたせいで目がかすむ…。
「わしという男が居ながら、他の男に浮気するやなんて」
ロックスは左手にカマを持ち、右手には先程回収した分銅をブンブン回している。くぬぅ、奴の余裕満ちた顔がイラつかせる……だがルシアの前であの技を使うのは…。
「はぁ…はぁ…ロックス…貴様」
ペッと唾を吐くとそれは唾液ではなく地だった。そんな事どうだってようが。我に必要なのは、目の前にいる奴をどうやって殺すか…それだけだ。
「貴方…何者ですか?」
「はぁ?わしはお前なんかに用はないっちゅーねん」
ロックスはルシアの言うことを無視に、いつものように気持ちの悪い目つきで我を見てくる。う…吐きそうだ。
「奴の名はロックス。此処の監守だ」
「そしてムラクモちゃんの彼氏やなっ」
「えぇぇぇ!!」
ルシアは凄く衝撃を受けたような声をあげる。…どうしてだ?我に彼氏がいると言うのがそんなに……だーー!!だから、我は何を考えているのだーー!!
くそう、こんな気持ちになるのはきっとロックスのせいだ。奴が奴が意味の分からんことを言い出すから、我も感染して意味の解らん気持ちになったのだ。
許すまじ。許さんぞ、ロックス!!