複雑・ファジー小説

『“私”を見つけて』11 ( No.23 )
日時: 2014/06/07 14:29
名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)

 着いたのはまたもや喫茶店だった。ビルの一角にあるそれはさっきのところより広くて、窓はすべて中のカーテンで閉じられていた。

「菫さん、この眼鏡貸してあげるからかけてくれ」
「うん、わかったけど……ここなの?」
「……ああ。ハプニングバーというところだ。だが昼間はただのカップル喫茶店らしいから心配はいらないぞ」
「は、えっ、はぷ……!?」

 ただのカップル喫茶店と言われても、最初の一言が衝撃的すぎて言葉を失った。
 ハプニングバー……コスプレなどの特殊な性癖を持った人が集まる風俗バーという認識を私は持っている。というか未成年がそんな店に入っていいの? いや、駄目でしょ。
 でもまあ彼が私を危険な目にあわせるとは思えないし、そもそも頭の良い男だ。色々と調べて今日という日を選んだろうから、信用なるはずだ。もし何か起きても蓮さんの責任だと自分に言い聞かせ、私は不安を抑えた。

「ただのコスプレ喫茶店だと思えばいい。君は先程と同様、俺とお茶を飲んでいれば良いよ」
「……わかった」
「一応カップルという設定だから、それなりに笑顔は作ってくれよ」

 私が頷くと、彼は私の手を引いて店に入った。受付にカードを見せ、すんなりと入っていく。
 中は普通の喫茶店と変わらなかった。コスプレっていうか浴衣とか着ている人はいるけど、思いの外落ち着いている。

「もしかして会員制なの?」
「ハプニングバーで会員制じゃない所のほうが少ないだろ」
「私にそんな知識あるわけないでしょ」

 話しながら店内を見回すが、目的の男性はまだ来ていないようだった。それなりにリラックスして再度頼んだカフェオレを口に含んでいたら、また新しい客が来たようだ。
 それに気づいた蓮さんは私との距離を詰めた。来たぞ、と小声で伝えられた。
 男性のペアは私たちの近くを通り過ぎて、なんと蓮さんのすぐ後ろの席に着いた。

「……大丈夫なの?」
「問題ない。ちょっと失礼、」

 彼は私の胸元に触れ、襟元を少し弄った。そのまま耳の裏を撫でられ、耳元に顔を近づけられる。

「隠しカメラだ。小型で無音だから、君は彼等が見えるように少し座る位置を変えてくれれば良い」
「っ……無駄な演出はいらないから早く退いて」

 ちなみに私たちの話し声はほぼ小声だ。
 赤くなる顔を誤魔化し、私は指示された通りに動いた。だが思ったよりも酷な作業だ。
 今はただのカップル喫茶といえど、元はハプニングバー。客が周りを構わずイチャついていても気に止めないのだ。彼等の姿を確認しなければいけないというのは、その点を考えると辛かった。
 何故なら、入店して僅かなのにも関わらず、彼等は濃厚なキスを交わしていたからである。どうせ見るなら若いカップルが良かった。なんで中年男性とキャバ嬢のキスシーンを見なくちゃいけないんだ。

「……蓮さん、気分が悪いんだけど」
「ああ、もういい。出ようか」

 その後、仕事は無事成功したようだ。報酬を少し分けてもらった。……もう、彼の仕事の手伝いは断ろう。


***
wiki調べですw
今も実際にあるのかは知りませんが、未成年は行かないように!!

0607 少しだけ修正