複雑・ファジー小説
- 『“私”を見つけて』16 ( No.28 )
- 日時: 2014/06/21 18:47
- 名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)
——ああ、またか。
私は呆れて溜め息が出た。何故なら私は頭痛で意識を失い、起きると白い天井が一面に広がっているというこの一連に覚えがあったからだ。俗に言うデジャヴ、既視感というものだと思われるが、それはすぐに違うのだと自覚した。
「また、倒れたな」
私が首を少し動かすと、蓮さんが座っていた。そうすると蓮さんだけでなく彼の背後にある備品たちも見える訳で——ここが以前お世話になった病院だということも察した。
長い夢を見ていた気がする。あれが私の無くしていた記憶の一部だ。まだ思い出せていないことはある。でも、あれは私の核心的な記憶だろう。
色々と考えを張り巡らせていると、蓮さんは私が混乱して喋れないとでも思ったらしい。彼は一人で話を続けた。
「何故君がここで寝ているかわかるか? 五十嵐鈴菜が車道に飛び出した少年を助け、その一部始終を見ていた君が突然頭を抱えて倒れた、らしいな。全ては彼女からの説明だ。救急車で君はこの病院に運ばれた。そして今日まで三日間眠り続けていたわけだ。一之宮夫妻がひどく心配していたぞ」
ここで彼は一息つく。一方的に状況を説明してるからか、とても饒舌だと思った。
彼は状況の説明しかしていないが、彼はどうだったんだろう。目的はわからないが、私の記憶探しに協力している彼は、何を思っているんだろう。心配? 何だかわからない目的が遂行できなくなるかもしれなくて不安? 先程言ったように「またか」と呆れてる?
「俺が何故見舞いに来ているかというと、表面上は君のクラスの副担任として——教師として来ている」
面倒くさがってる? 手のかかる小娘だと思ってる? そう思っても仕方ない。だって私はそれくらい迷惑をかけている。邪険に扱われても仕方ない存在だ。
さっきまでは少し戻った記憶に混乱していたのに、今は蓮さんに見捨てられないかが不安でしょうがない。思考が入り乱れておかしくなりそうだ。
「本題はわかっていると思うが、君の記憶の話だ。激しい頭痛だったんだろう? 何か思い出してはいないか?」
蓮さんは淡々と私の記憶の有無を問う。寝ているままだというのに、眩暈がしてきた。頭がぐわんぐわんと緩い痛みを訴えた。
——気づけば、私は掠れた声で迷惑極まりないことを喋っていた。
***
期末テストが近いのでスローペースで。