複雑・ファジー小説

『“私”を見つけて』20 ( No.32 )
日時: 2014/07/21 21:18
名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)

 私は友人と外食をするとだけ連絡し、五十嵐家に留まっていた。そうしてまた話しているうちに、彼女の両親が帰ってきたようだ。私は鈴菜と一緒に出迎えに行った。

「おかえり! この子が今日話してた友達だよっ」
「鈴菜さんと同じクラスの一之宮菫といいます。今日はご馳走になります」

 少し緊張感を覚えながらも一礼する。そこで本来の目的を思い出した。
 もしかしたら鈴菜のご両親が何かしらのヒントを持っているのかもしれない。期待に胸を膨らませて顔をあげると、唖然とした見覚えのある顔が目に入った。

「あなたは……」
「——っえ、なんで、」

 夢の中のあなたたちがここにいるの?
 見つめあったまま硬直している私たちを鈴菜が不審そうに見ているのに気がついた。だが、今の私にそれを気にかける余裕などこれっぽっちもない。
 彼らは間違いなく、私の記憶の中にいた両親だ。鈴菜のじゃなくて、私の両親だったはずの人たち。それを認識すると共に、いろいろな情報が私の脳に次々と浮かんできて、鈍い頭痛がした。
 ここで私はすべてを理解したのだ。どうして記憶の中の両親が赤の他人である立ち位置にいるのか、私の思い出した記憶と今の両親の話の矛盾など、何となくだがわかってしまった。
 すると突然この場にいるのが怖くなった。先程まで親しく会話していた鈴菜さえもだ。

「いやっ!」

 倒れるほどではない頭痛を抱えながら、私はまっすぐとある場所に向かっていた。

***
夏休みに入ったので更新速度をあげたいと思います。
おそらく夏休み中には完結するかと…。