複雑・ファジー小説

Re: CLOXS-VALLIAR-DIMO【オリキャラ募集】 ( No.15 )
日時: 2014/04/28 20:32
名前: 氷戯薙森 (ID: gOBbXtG8)

 エレイシアは救いの間へと足を運び出した。
 が、その足は数メートルも歩かないうちに固まる。
 殺気と視線が、彼女に向いた。

「っ!」

 同時に、エレイシアは懐から刀身が青白く光る剣を取り出し、ほぼ反射的にそれを振るっていた。
 何か柔らかい肉を切り裂く音がして、生暖かい血が彼女に降り注ぎ、何かが落ちる音が響く。
 冷静になって確認してみれば、エレイシアは飛行型魔獣の一種である<キメラ>を倒していた。

「——何で? ここは神殿なのに……」

 血に塗れた形のいい顔の眉を顰め、エレイシアは得物をしまう。

 神殿は元々、魔獣などの悪い魂を持つ生命は近付けないほど神気が強い。
 はずが、現在こうして魔獣が神殿に侵入した。崩落の行き過ぎで神気が弱ったのか、または別の問題か。
 再び考え事に耽るエレイシアは、傾げた小首を戻せないままに救いの間へと再度出発した。


  ◇ ◇ ◇


 折角だといってリリーをお茶に招待し、紅茶を淹れようとしたナイト。
 彼は彼女と共に、やってきたエレイシアについている血を見て驚くばかり。
 怪我は無いか。そう言いながら慌てたのはナイトだ。

「お嬢様、どうしたのですか!? お怪我は!?」
「ちょっと、ね……怪我は無いよ」

 エレイシアは、先ほど襲ってきた魔獣について述べた。
 聞いた二人はやはりというか、ありえないといった表情を浮かべることしか出来ないようだ。

「一体、どういうことなのでしょうか……」
「うーん、分からないなぁ。とりあえず、お風呂入ってきていい?」
「えぇ、いってらっしゃいませお嬢様。紅茶は後ほど、改めて淹れましょう」
「ふふっ、ありがとう」

 未だ同様を隠せない二人を置いて、エレイシアは救いの間を後にして自室を目指した。
 その際に、リリーが心配だと言って彼女についていこうとしたが、エレイシアは断っていた。
 彼女とて巫女を務める身。決して、か弱いわけではない。
 戦闘を本職とする騎士や戦士よりは劣るが、護身ならば十分にできる。でなければ、巫女を務めることはできない。


  ◇ ◇ ◇


 エレイシアの自室は無骨な神殿の外見とは打って変わり、とても華やかで女の子らしい部屋となっている。
 元々神殿に身を置いて寝食をするので、ここは彼女の家でもある。
 因みに、彼女は神殿の外に出たことが殆ど無い。用事なら、リリーを初めとする神官たちに頼めば彼女らが済ましてくれる。
 故に、彼女には外へ出るという理由がほぼ無い。

 温かな照明の下、エレイシアは入浴を満喫していた。

 均整のとれた体躯、砂糖のような儚さを含む白い肌。
 エレイシアはどれをとっても、魅力的な女性の一人と言っていい容姿をしている。
 彼女自身は容姿に自信がないというが、それでも周辺の女性の中では群を抜いて美しい。

「……綺麗だね」
「ふぇえ!?」

 突然、小さな声が浴室に響いた。
 湯船に入ったお湯の音をバチャンと立て、エレイシアは体を震わせる。
 気付けば隣でリオが、一糸纏わぬ姿でエレイシアと一緒に入浴していた。

「ちょ、ちょっとリオちゃん……いつの間に?」
「気付かなかっただけ」

 曰く、ずっと一緒にいたのだとか。エレイシアが自室に入るときからずっと。
 彼女は頬を紅潮させ、小さく縮こまった。
 リオとは何度か入浴を共にしていたエレイシアなので、抵抗は無い様子だ。
 リオはふわりと笑みを浮かべ、エレイシアに寄りかかる。

「久し振り、だね。こんな風に一緒にお風呂入るなんて」
「こんな風にって……リオちゃんが無理矢理入ってきただけじゃん……」
「——ダメ?」
「え、その……ダメじゃないよ!」
「よかった」