複雑・ファジー小説
- Re: CLOXS-VALLIAR-DIMO【オリキャラ募集】 ( No.17 )
- 日時: 2014/04/29 18:48
- 名前: 氷戯薙森 (ID: gOBbXtG8)
いざ出発。と思ったところまでは良かった二人だが、今の彼女らにはまるで当てがない。
闇雲に行動しても無駄な消耗を重ねるだけなので、二人はまずどの町へ行こうかを考えることにした。
現在地は神殿よりほど近い町〈カーレン〉で、クロウ大国の極東に当たる。
悩む二人。彼女らに、一人の来客があった。
「エレイシア様」
エレイシアが振り返れば、全身を覆う黒ローブに身を包んだ男〈マーリン〉がいた。
僅かに覗く隙間から、切れ長スカイブルーの瞳と真っ白な肌が窺える。
「マーリン? どしたの?」
「私も、旅にお供させていただきたい。エレイシア様の身を案じ、私と他二名の連れもございますが」
マーリンはエレイシアの旅についていくと申し出た。
それは暗に、お目付けの義務も果たしたいという思いも言っている事となる。
マーリンは元々、神殿統括者の総帥より派遣されたエレイシアのお目付け役という仕事を持っている。
故に、彼は片時も彼女の側を離れてはいけないという。
「うん、いいよ。……それで、他の二人って?」
「直にいらっしゃるでしょう。正確に言えば、二人と一台、ですが」
「二人と、一台……?」
何やら苦笑するマーリンに、エレイシアは小首を傾げる。
「エレイシア様ー!」
丁度その時、上空よりエレイシアを呼ぶ少女の声が響いた。
彼女は手を翳して太陽の光を遮り、指の隙間から声のした方向を見上げて様子を窺う。
見えたのは、淡い紫の髪をひとつに纏めた少女が、背中に生えている翼でゆっくり降下してきている光景だった。
それが誰か、エレイシアはすぐに理解できた。
「リュナー!」
降りてきたのは、上品な白い脚と肩を露出した神殿の守護者〈リュナ〉だった。
降下するなり、二人は抱擁を交わす。
「あはは、暫く振りですねー!」
「そういえばリュナ、最近会ってなかったね」
リュナはその通り名の如く、神殿の守護者を務めている。
気まぐれにふわふわと飛んでいるだけのようだが、それでも彼女なりに警戒をしているのだという。
これまでやってきた魔獣以外の外敵——例えば盗賊など——は、全て彼女が蹴散らしてきた。
が、二人は仕事上の都合で中々姿を合わせることがない。
ここ最近では、三ヶ月ほど会っていなかった。
「お話の途中すみません」
マーリンが、魔法による通信を終えてエレイシアに話しかける。
「もう一人と一台は、都合により遅れることとなるそうです。一先ず、私とリオ、リュナで旅を始めましょう」
旅を始めましょう。その言葉を、エレイシアは改めて嬉しいと思った。
エレイシアの旅の目的を考えれば、当然といえるだろう。
「——ありがとう」
今一度、彼女の口からそう零れた。