複雑・ファジー小説

Re: CLOXS-VALLIAR-DIMO【オリキャラ募集】 ( No.23 )
日時: 2014/05/03 21:57
名前: 氷戯薙森 (ID: gOBbXtG8)

 旅を決意して六日が経った。
 エレイシア達はカーレンの町を離れてはいたが、未だクロウ大国の極東で右往左往している。

 情報収集が、思った以上に難航しているのだ。

 最終手段として、ではあるが、最悪闇雲に動き回ればいい。
 だが、それに伴うリスクは、エレイシア達が背負うには些かならず大きい。

 まず第一に、膨大な金と時間がかかる。
 金はどういうわけか、魔獣を倒すと落とすので金に問題は無い。
 だが、時間はタイムマシンでもない限り、取り戻せるものではない。

 第二に、仲間の疲労。
 クロクス・ヴァリアー・ディーモには、何の手がかりもない。さらに言ってしまえば、一切の正体が不明という謎の言葉だ。
 そんな言葉の正体を、数少ない情報さえ無しで探すのは無理がある。
 そうして闇雲に動き回った結果など、行動に移さずとも目に見えている。

 最後に、世界のバランス。
 エレイシアの見解ではあるが、ロスト現象とクロクス・ヴァリアー・ディーモとの間に関係がないとは言えない。
 さらには神殿の管轄者もいる。クロクス・ヴァリアー・ディーモと同じくらいに正体が不明の人物が。
 放っておけば、何かが起きてもおかしくは無い。

 故にエレイシアにとっては、なるべく闇雲に動き回りたく無いのが本音である。

「落ち着いてください、エレイシア様」
「マーリン。今の貴方に私の思いなんて分からないでしょ。ちょっと黙ってて」
「——失礼しました」

 時間が無いと焦るあまり、今の彼女は気が立っている。誰の話も聞こうとしない。
 ロスト現象の対象となったものの直轄管理者。それがエレイシアなのだ。焦らないはずがない。
 情報収集で忙しなく動き回る彼女についていく一同は、心配そうな目を彼女に向けている。

「レイ、大丈夫かな……」
「エレイシア様なんだから、きっと大丈夫だよ」

 いつもは底抜けに明るいリュナも、今はいつもの勢いを半分以上失いかけている。
 マーリンに至っては、表情にこそ出ていないが、どう彼女を制したらいいものか迷っている。

 そうしていつしか、エレイシアの存在はクロウ大国で有名になってしまった。
 あってないような言葉の意味探しに翻弄される少女がいる、と。

 エレイシアにだけ、クロクス・ヴァリアー・ディーモという言葉に宿る言霊が分かる。
 一方で一般人には、当然ながらそれが全く分からない。
 無駄足を踏んではいないだろうか。エレイシアの焦り方は、世間にいる一般人の目にはそう見えているらしい。

 やがてクロウ大国の極東全てを回ってしまった今、エレイシアは吹っ切れた。
 突然表情が明るくなった彼女に対し、マーリンがどうかしたかと尋ねる。
 リオは「変なものでも食べた?」とからかっていたが、エレイシアの返答はまさに想定外のものであった。

「よくよく考えてみたんだけど、クロクス・ヴァリアー・ディーモの事より神殿の総帥について調べればよくない?」

 これぞ名案、といった風に口を開いたエレイシアを見て、皆は思わず溜息をついてしまった。
 自分とエレイシアは、そんな単純な近道さえ見出せなかったのか。彼女と自分への呆れを多分に含んだ溜息である。

「どしたの?」

 エレイシアは小首を傾げる。

(もしかしして天然?)
(エレイシア様だかんねー……ありうる)

 リオとリュナが、小声で噂をしている。

「ハックション! うぅ、誰よ私の噂したの……」

 可愛らしく小さなくしゃみをしたエレイシア。
 彼女を横で見ていたマーリンが久しく、思わず笑みを浮かべた。