複雑・ファジー小説

Re:  絶 ゆ る 言 の 葉 。 (祝・参照2000突破) ( No.13 )
日時: 2014/11/24 22:00
名前: 奏弥 ◆4J0JiL0nYk (ID: rtyxk5/5)


 脳内で小さな音がしきりに鳴っている。
 それはどこから聴こえているのか、何の音なのか、私には分からない。分からないが、不思議と落ち着く音だった。




 「だから、別れよう。」


 見慣れた歩道の、夕陽に照らされた白線とアスファルト。明瞭と目に訴える赤の中で、伸びる二つの影はやけに暗く深く沈んで見えた。

 別れよう。
 唐突に告げられたこの四文字を、私は頭の中にある辞書で引いていた。自分の意識から外れた両足は、もう一つの両足を追うように、同じ歩幅で動いている。
 どんな意味か考えずとも、有り触れたその言葉を、意味を、私は知っていて。無意識にでも動くこの両足のように、それは本能への刷り込みに似ていた。



 「……、そうだね。」



 そして、私がこう口にするのも、最早自然の摂理だった。



 頭の中で鳴っている小さな音がどこから聴こえているのか、なんの音なのか、私には分からない——。





 - Side:成瀬 -