複雑・ファジー小説

Re: ユーリの冒険 ( No.36 )
日時: 2014/06/04 19:16
名前: 千螺虔迅 ◆xJD03r/VXY (ID: gOBbXtG8)

「……つまり、逃がしたと?」

 真っ暗な空間で、蝋燭の灯が6つ揺らめいている。
 いくつか発せられている声は一切反響せず、音は虚空へと消えていた。
 あるとき、区別がつかない全て同じ声色のうち、突然1つが低いトーンへと変化した。
 怒りという感情を湛えているようである。

「お前も現場にいたならば、奴は息絶える寸前に捉えることができたはずだ」

 反抗する声のトーンも低くなっている。
 誰が何処にいて、どのような表情で会話をしているのか。目視では一切分からない。

「彼女が連れ去ったみたいだね。サクヤちゃんだっけ?」

 突然、蝋燭の灯が一つ増えた。
 増えた灯は他のそれよりも一段と大きく、声色も明るい青年の声となっている。

「サクヤ……ライオット一族の生き残りか」
「彼女が絡んでいるとすれば、いくら馬鹿でも分かるよね? ユーリちゃんの喪失理由」
「ふん。サルが、抜かす……」