複雑・ファジー小説
- Re: ライオンさんとぼくのお話 ( No.19 )
- 日時: 2014/05/14 15:48
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
第15話
「和人ー。パパと一緒にデパートに行こうなのだ」
日曜日、父さんがデパートに行こうと言い出した。
ぼくは父さんが大好きだけど、ひとつだけ困っていることがある。
それは・・・・。
「父さん、これ着なきゃだめ?」
「これを着ると和人はかわいくなるのだ」
ぼくはデパートとかドライブに行くときは必ず薄茶色のインバネスコートと帽子を着なきゃいけないってこと。
まるでシャーロックホームズになった気分。
そう書けばいくらかいい感じがするけど、てっとり早くいえば、コスプレみたいなもの。
そしてこの格好は暑くて人の目に付く。
だから、できればこの格好はしたくなんだけど、父さんはいいだしたらきかない。
仕方なくコートと帽子に着替えるぼく。
「かっこいいのだん。可愛いのだん♪」
父さんがほめてくれるのは嬉しいけど、この格好で歩くとかなり体力を消耗するんだよ・・・・(汗)
☆
「きみのクラスメートに佐々木 春くんという子はいないかね」
ぼくたちがデパートから帰ってきたらいつのまにかライオンさんがリビングでお茶を飲んでいた。
母さんは別に気にしていない様子でお菓子を持ってきている。
父さんも彼がライオンであることに興味がない様子だ。
「ここに座りたまえ、和人くん」
大きなかぎづめのある指でいすを指差し、ぼくに座るよう促した。
ぼくが座るとライオンさんはいつものように怖い顔だけど穏やかな笑みを浮かべて話し始めた。
「私がなぜ彼のことを話すかというと、彼もきみと同じく友達がいないからなのだよ」
春くんは言われてみれば、そんな感じがする。
誰かと仲良く話しているところを見たことがない。
「彼はきみと同じく性格で損をしている。きみたちふたりは似てもいるし違うともいえる」
お茶を飲みながら話を続けるライオンさん。
「彼はきみと同じく素直になれない。友達が欲しいと思っているのだが、それをうまく感情表現ができずについ、クラスメートにつらくあたってしまう。言い換えれば、彼は不器用だといえる。そしてきみも彼と似ているところがある」
と、ここで、母さんが持ってきたクッキーをつまむ。
「きみはてっとりばやくいうと、甘えるのは悪いことだと思っている。
そして早く大人になるのがいいことだと思っている」
ライオンさんの言葉は正しいと思った。
ぼくは確かに甘えたいという感情がある。
でも、甘えるのはかっこわるいことだと思う。
ライオンさんのキラキラ光る黒い瞳がぼくをみつめた。
「かっこわるくなんかないさ。甘えたいときはうんと甘えてもいい」
その言葉になぜかぼくの目から涙が出た。
「和人くん、きみは今まで我慢してきたのだろう。でももう我慢しなくてもいいんだよ」
うっ・・・うっ・・・・。
「泣きたいときは思いっきり泣きなさい。気分がすっきりするよ」
ありがとう・・・ライオンさん。