複雑・ファジー小説
- Re: ライオンさんとぼくのお話 ( No.20 )
- 日時: 2014/05/14 15:54
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
第16話
翌日、ぼくは学校で思い切って春くんに話しかけてみることにした。
「ねぇ・・・・」
「何か用?なければ話しかけないで」
あっさりとつっかえされてしまった。
でもここであきらめるわけにはいかない。
「ぼく、きみと友達になりたいんだ」
「友達なんか・・・・別に・・・」
彼は少し上目づかいでぼくを見た。
「ねぇ、図書館行かない?」
「い・・・・わっ、なにするんだよぅ」
気がついたら、ぼくは彼の手をにぎって図書館までかけだしていた。
「面白い本があるんだ!お勧めするから一緒に行かない?」
「うん・・・・わかった」
こうしてぼくと春くんは少しだけ仲良くなれた。
☆
「そうか〜。春くんと友達になれたのか・・・・それはよかった。本当によかった」
学校でのことをライオンさんと母さんと父さんに話すとみんな喜んでくれた。
「これできみも学校に行くのが楽しくなるはずだよ。ところで・・・」
「どうかしました?」
「きみはどうして両親のことをパパとママって言わないのかなと思ってね」
かあっとほっぺたが赤くなる気がした。
「べ、べつにいいじゃないですか!」
「そんなこと言っているけど、本当は言いたいんじゃないのかな。
顔に書いてあるよ」
ぼくは急いで、洗面台にいって鏡を見た。
すると驚いたことに本当にぼくの顔に『ぼくは両親のことをパパとママって言いたいです』と書かれている。
ぼくは驚きのあまり、急いでリビングに向かった。
洗面台から帰ってきたぼくの姿をみるなり、ライオンさんは鋭い歯の並んだ口を開けて笑った。
「ハハハハハハ、驚いたかな」
「悪ふざけはよしてください!」
ライオンさんはこうなることを読んで、あらかじめ鏡に書いていたんだそうだ。
ぼくがほっぺたをふくらませると、ライオンさんはニコニコ笑った。
「ほら、きみも意外と子どもっぽいところがあるじゃないか」
「えっ?」
「きみは自分で随分おとなびていると思っているのかも知れないけど、きみはまだこどものままだよ。成長したい気持もよくわかるけど、あせらないようにね」
そうか。ライオンさんはこのことを伝えるためにこんなことを・・・。
彼はおいしそうにクッキーを食べていたけど今回のことは許してあげることにした。
ありがとう、ライオンさん。