複雑・ファジー小説
- Re: ライオンさんとぼくのお話 ( No.28 )
- 日時: 2014/05/15 20:29
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
第22話
ところが、次の日サッカー部にいってみると、あろうことかぼくにとって最悪の光景が待ち受けていた。
あのキャプテンがいない・・・・。
「そうだよ。あいつはな、おれたちに絶望してやめたんだ。ま、当然といえば当然だけどな」
昨日のガラの悪い人・・・・・。
「おれは荒木ってんだろうが!」
下の名前はなんだろうか気になったけど荒木さんは教えてくれなかった。
「くそっ・・・・おれが・・・違う名前だったら・・・・!!」
そんなつぶやきが聞こえた気がした。
そのとき、ぼくはグラウンドの隅でガタガタ震えている人を見つけた。
荒木さんの制止をきかず、近づいて話しかけてみる。
「あの・・・」
「(ガタガタ)だ、誰・・・?」
「ぼくは和人といいます」
「(ガタガタ)ぼくは軽井沢隼人・・・・きみと同じ学年・・・」
なんでこの人はこんなにビビッてるんだろう。
それをたずねようとしたとたん、軽井沢くんは逃げていってしまった。
なんだったんだ、アレ?
「軽井沢くんのこと、知りたいのですね」
ふりむくと星野くんがいた。
「知っているの?」
「知っています。彼は臆病で人見知りが激しいんです。前はなんとか大丈夫だったんですが、今じゃあのとおり。やっぱり・・・みんな変わっていないのですね」
みんな?それ、どういうこと?
すると星野くんはにこっと笑って話始めた。
発見。星野くんは笑うと可愛い。
「実はぼくたちは同じ小学校に通っていたんです。そこでは野球部をしていました。荒木さんもぼくも軽井沢くんも・・・」
それは意外だ。はじめて聞く話にぼくは驚きを隠せなかった。
「ところで、きみは荒木さんの下の名前を知っていますか?」
「知らない。なんて名前なの?」
「叉衛門です。荒木叉衛門。これが荒木さんの名前です」
ぼくは思わず吹き出しそうになった。
またえもん?ドラえもんみたい。
「その名前のせいで、中学にあがったとたん、からかわれたそうです。しかも、腕の怪我で野球もできなくなってしまって、あんな風になったそうです」
そっか。だからサッカー部に・・・なんだか荒木さんがかわいそうになってきた。