複雑・ファジー小説

Re: ライオンさんとぼくのお話 ( No.32 )
日時: 2014/05/16 19:24
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

第25話

星野くんはというと、子どもたちに負けないぐらい大声で声援を送っている。

正直、これは最悪の状態だ。

声援を送らなければ、周囲から明らかに浮いてしまうし、かといって声援を送ったら送ったで恥ずかしくなる。

ぼくは決死の覚悟で居眠りをすることにした。

会場のいすは思ったよりも気持ちよくて、ぼくはすぐに寝てしまった。

「くん・・・・和人くん、起きてください」

星野くんの声がしたので、あわてて目を覚ますと、星野くんが半開きの目でぼくを覗き込んでいる。

「ん・・・ぼくねてたかなぁ」

「はい。まさに爆睡状態でしたよ」

星野くんはいつもより声が少し大きくなっている。表情からは読み取れないけど怒っているのだろうか。

「星野くん・・・ごめんね」

「いいですよ、もう忘れました」

声がいつもの調子に戻ったのでぼくは安心したけど、まさかこのあと、30分以上も星野くんの戦隊ヒーロートークを聞かされるとは思っても見なかった。

そのあと、ぼくと星野くんとパパとママはドーナツ屋さんに入って、ドーナツを食べることにした。
ドーナツを食べながら、ふと、さっきの星野くんのつぶやきが気になった。
「星野くん、ちょっといいかな」

「どうかしましたか?」

「さっき、ぼくがうらやましいって言っていたけど、どうして?」

「すみません。聞こえていたんですね・・・・別に気にしないでください」

星野くんは笑顔でそういったけど、声にはやっぱり寂しさがこめられているような感じがした。