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複雑・ファジー小説
- Re: マジカルスイーツショップ【参照230突破!】 ( No.38 )
- 日時: 2014/06/10 08:18
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
嬉しいなあ。きょうは、クロワッサンくんとお店でふたりっきり。
マーラーくんもヘンリーさんも旅行に出かけて留守。
ふたりがいないのは少し寂しいけど、そのおかげで大好きなクロワッサンくんと一緒にいられるんだから、まさに願ったり叶ったり。
彼の入れてくれた紅茶に口をつける。
爽やかな香りが心を癒してホッとする安らぎの空間を演出してくれる。
それにしても綺麗で可愛い…
彼の容姿は女の子みたいだけど歴然とした男の子…らしい。
正直たまにあたしより可愛いんじゃないかって思わせるときもあるけど、彼だから仕方ないよね。
「あ〜美味しい〜癒される〜!」
あたしの幸せそうな顔を見て彼も微笑む。
その優しい笑顔を見ているだけであたしは十分に幸せ。
そういえば、彼が口を聞いたところを一度も見たことがない。
もしかすると話せないのかな?
あたしが訊ねると、彼はなんとも言えない悲しそうな表情で大きな黒い瞳にうるりと涙を浮かばせながら、コクリと頷いた。
可哀想。
別にこれは同情から来ているのではなく、本当に彼の辛さがよくわかる。
なぜならあたしも過去に虐待を受けて、言葉を話すことができなくなったときがあった。
あのときは話したくても声が出せなくて本当に苦しかった。
もしかすると、彼は私よりもっとずっと辛い経験をしてきたに違いない。
そう思うと、まるで自分のことのように胸が痛み、彼がまるでガラスの工芸品やお菓子細工のように繊細で壊れやすい存在に見えてきた。
「クロワッサンくん、ごめん!ごめんね!」
気が付くとあたしは立ち上がって、彼をぎゅっと抱きしめていた。
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