複雑・ファジー小説

Re: 虚空のシェリア ( No.2 )
日時: 2014/09/20 10:04
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

 ライモンディ一族とは、このカルマ高原で暮らす遊牧民族の事。
 一族の者は皆褐色の肌をしていて、今シェリアの手を引いて走っているレクトも例外ではない。ただし、シェリア。彼女だけはライモンディ一族にしては珍しく、日焼けとは無縁の色白の肌をしている。
 そんなライモンディ一族の家は、折りたたみ可能なテントのような家をしている。見た目は全て殆ど同じだが、長老の家だけは、特別な装飾が施されているために分かりやすい。
 レクトはまさに疾風の如く、その長老の家へと駆け込んだ。

「ローガン長老! 失礼します」

 無論、シェリアをつれて。
 広々としたその家の中では、レクトにローガンと呼ばれた、白い顎鬚と禿げかけた白髪をきっちり整えた年の頃70代の男性——もとい、長老である"ローガン・ライモンディ"だけがいた。
 他の子供達は既に訓練に出かけたらしい。

「ご苦労じゃったなレクト。それと、遅かったなシェリア。どこで何をしていたのじゃ?」

 優しくも厳しく、威厳あるしわがれた声がする。

「……別に、何も」

 対してシェリアはつまらなさそうに、その赤い瞳を明後日の方へ向けて、耳にかかった黒い短髪を払いのけるだけである。レクトはそれをみて、眼光を鋭くさせた——つもりでもまだ穏やかな——瞳を彼女に向ける。

「おい、長老だぞ。礼儀くらい弁えろよ」
「……」
「よいのじゃレクト。それもシェリアの人柄じゃからの」
「そ、そう……でしょうか?」

 ふぉっふぉっふぉ、と愉快そうに笑うローガンだが、レクトは今ひとつ腑に落ちないのか、首を傾げて唸っている。
 こほん、とローガンが咳払いを1つすると、彼は本題を切り出す。

「今日の訓練は実地訓練じゃ。混迷の森付近へと赴き、その近くに出没する狼型の獣を討伐してもらう。よいな?」
「分かりました。行くぞ、シェリア」

 本題を素早く飲み込み、理解したレクトはさっさと長老の家を後にした。
 シェリアも彼に続いて、ゆっくりとした動作且つ欠伸のオマケつきで、のんびりとその場を去った。