複雑・ファジー小説

Re: 虚空のシェリア ( No.7 )
日時: 2014/09/15 17:27
名前: 煙草 (ID: lY3yMPJo)

 一方その頃。森の入り口では、複数人による1つの騒ぎが起きている。

「あンの馬鹿っ!」

 ———などと叫びつつ、頭を抱える村の青年戦士複数と。

「もー、何で先に行っちゃうかなぁ……シェリア……」

 ———と呟きながら、心底不安そうな眼差しで森の入り口を見つめる歩夢。

「シェリアもそうじゃが、他の子供達も心配じゃの」

 最後に、肩で巨大な金槌を担ぎながら独り言を放つ長老"ローガン"の姿があった。
 年齢は優に70を超えている彼だが、まだまだ体つきは勇ましく、正に筋骨隆々。現役バリバリの戦士である。
 同時に長老なだけあって、単純な戦闘能力と体力であれば村一番を誇っている。だが、流石に寄る年波には勝てないのか、魔法による戦法が減衰している一方である。故に現状村で最強と言えば、魔法の扱いに最も長けたシェリアなのかもしれない。
 しかし、そんなシェリアもまだ少女に変わりはない。ましてや彼女が踏み込んだのは、その名に違わぬ迷いの森。

「シェリア姉ちゃん、大丈夫かな……」
「大丈夫よ、きっと」

 シェリアの家族も来ていて、弟の"エリオット"が心配そうにしている。
 だが、そんなエリオットを宥める母"クラン"も、やはりというか不安は拭い去れないらしい。

「ああ見えて、あいつは無鉄砲なところがあるからな。心配だ」

 父の"トム"も、腕を組みながら渋面で森の入り口を睨んでいる。
 一応その背には身の丈余りの大斧が背負われている。彼も一応、村の戦士なのだから。

「……では、仕方あるまい」

 それからしばらくして、事態を動かしたのは、いざ突入せんといわんばかりに武器を構えるローガンであった。

「皆の者! これより訓練に出かけた村の子供達を捜索するべく、迷いの森への突入を許可する!」

 次いでそんな威厳ある声が響き、続け様に戦士たちからは掛け声が上がる。
 そして我よ先にと、戦士たちは森の中へと雪崩れ込んでいった。