複雑・ファジー小説

Re: 常闇の魔法青年-Twilight of Anima-キャラ求 ( No.11 )
日時: 2014/06/28 16:54
名前: 紅 (ID: gOBbXtG8)
参照: 四話〜始まった旅〜

「他に聞きたいことはある?」
「いや、大丈夫だ。助かる」
「いいよ〜別に。また分からないことがあったら、分かる範囲なら答えてあげるからね〜」

 暁美と沙那の到着を待つ淳也は、悠斗から旅の心得について聞いていた。
 聞かないよりは良いだろうかと思った彼が、自ら教えてくれと悠斗に頼んだのだ。
 すると予想に反したことばかりが聞けたらしく、勉強になったなと思うのであった。

「あら、2人とも早速仲が良いわね」

 暫くして、沙那を連れた暁美がやってきた。

「淳也、紹介するわね。この子は早瀬沙那。今回の旅に同行してくれる子よ」
「——よろしく」
「あぁ、よろしく」

 淳也的な沙那の第一印象は、食えない奴だ、という印象であった。
 寡黙で大人しい少女は他にも知り合いでいたが、何を考えているのかさっぱりな人物だった。
 沙那のほうが、まだ接しやすい方かもしれない。

「それじゃあ、行きましょ」

 そうしてやがて、暁美が町を出て行こうとしたとき。
 切羽詰ったように、淳也が彼女を呼び止めた。呼び止められた彼女は出鼻を挫かれたかのように振り返る。

「待て」
「何よ」
「旅の目的は世界を救うことだろうが、具体的には何をすればいいんだ?」

 飛んできた質問に、暁美は思わず「は?」と聞いてしまった。
 が、素っ頓狂な声に淳也が戸惑い始めた頃、暁美はすぐにその表情を引っ込めた。
 そういえば、まだ具体的に何をすれば良いのか説明をしていなかったらしい。

「——ダークオーブ」
「あ?」

 暁美が説明を始めようとしたとき、淳也の横にいた沙那がボソッと口を開いた。

「——だから、ダークオーブを壊すの」
「は? ダークオーブ?」

 ダークオーブとは平たく言えば、マナの秩序を乱す存在の事をさす。
 仕組み的には、マナを吸収したり放出したりを繰りかえすだけ。
 元々はマナを独り占めして儲けようとする者に対して作られたのだが、最近そのオーブの制御が利かなくなっているという。
 故に、今あるオーブを壊して新たなものを作らねばならない。
 今回の旅の目的は、まさにそれである。

「ダークオーブはその名の通り、闇の力を解き放ってるの。だから貴方の力が必要なのよ」
「俺の力?」
「そう。貴方の力で、混じり気のある闇を純粋な闇に変えてほしいのよ」

 淳也はダークオーブについて、暁美から解説を受けた。

 ダークオーブは、一切の混じり気がない純粋な闇から成る。
 そこに混ざり物——つまりは不純物——が入ってくれば純粋な闇ではなくなり、闇のあるべき姿が乱れてくる。
 ダークオーブは仕組みが仕組みなので、エレメントを含んでしまった
マナを吸収してしまえばこうなるに決まっている。
 そこで淳也によって闇のエネルギーをオーブへ注入することで、オーブ一度壊して元に戻そうとしているのだ。

「なるほど、俺の闇エレメントでダークオーブを治せってか」
「物分りがよくて助かるわ。じゃあ序に、エレメントについて詳しく説明しておくわね」

 暁美の解説が続く。
 淳也は真面目に聞き入ってるが、悠斗は草むらに寝転がって昼寝をはじめ、沙那は岩に座って本を読み始めた。


  ◇ ◇ ◇


 エレメントは、一言では説明が付かない存在である。

 火、水、雷、風、土、闇、光、無。
 エレメントは大きくこの10種類に分かれ、これらは〈上位属性〉と呼ばれている
 それ以外の熱、冷、土、草、血、悪、神、癒など、それこそ数え切れないくらいに存在するエレメントは〈下位属性〉となる。

 闇という上位属性があったとしよう。
 この闇エレメントには、悪、血、死などの属性が含まれている。
 このように、上位属性の中にある属性を下位属性と呼んでいる。

 だが上位属性も下位属性も、実際には大した差はない。
 ただ大きな枠か、その中に納まる小さな粒か。それだけの差なのだ。

「なるほどな」
「ふふっ、理解してもらえたかしら? それじゃあ、改めて出発するとしましょう」

 解説を終えた暁美は、寝ている悠斗の頬を突いて起こし、町を出て行った。
 淳也を初めとする皆も、固い決意を胸に彼女の後に続いた。

 こうして、彼らの旅は始まった。
 幾多の困難や回り道があるであろうこれから、どのような壁が目の前に憚るのか。
 皆はそれが少し楽しみで、ちょっぴり怖くて、とてもワクワクしているのだった。


 ————定められた、自分たちの運命さえも知らずに。