複雑・ファジー小説

Re: 常闇の魔法青年-Twilight of Anima-キャラ求 ( No.13 )
日時: 2014/06/29 10:57
名前: 紅 (ID: gOBbXtG8)
参照: 二章一話〜アイテム色々〜

「ここから一番近いダークオーブの祭壇は、北へ向かった先にあるユルング遺跡よ。さ、行きましょう」

 現実世界とルミナシア。
 この2つの世界に殆ど違いはないと教わった淳也だが、実際はそうではなかった。
 世界地図を見てもそうだが、ルミナシアでは、1つの国の中に〈集落〉という建物の集合体が散らばっている。
 それ以外の場所は殆ど家が建っていない草原地帯で、一歩集落を出れば、件のモンスターがよく蔓延っているという。

 彼らが歩いている草の生えていない砂利道は、このだだっ広い草原で迷わないように作られたもの。
 ご丁寧に分かれ道には看板も立っており、立派なことに所々に周辺地図の載った看板さえも立っている。
 初見でも決して迷うことはないであろう程、丁寧な道案内がなされていた。

「そういえば淳也」
「ん?」

 会話もなくただ道を歩いていると、不意に暁美が淳也に話しかけた。

「さっき渡した5万円、何に使ったの?」
「あぁ、それか。とりあえず緊急時のためにいくらか貯金して、結果的に買ったのはこいつだ」

 淳也は鞄から、灰色に染まった水晶を取り出した。

「何? それ」
「エスケープクリスタルだ」

 エスケープクリスタルとは、平たく言えば繰り返し使える逃走用の道具のこと。
 魔法でも何でもいいので、その水晶にマナを吹き込むと煙が発生し、相手の目をくらますことが出来る代物である。
 本来の使用目的は逃走に用いるものだが、その用途は工夫次第で様々なバリエーションが出てくる。
 代表的な工夫例と言えば、燻製を作るときに用いることで手っ取り早く燻製が出来上がる。など。

「なるほど、確かに便利ね」

 暁美が相槌を打つ中、沙那が明後日のほうを向いたまま口を開いた。

「でも逃げるなら、暁美の閃光で十分」
「あら、じゃあどうするの? 私が戦闘不能だったら」
「——あ」

 暁美は光のエレメントなので、敵の目を眩ませるのなら彼女の魔法で十分である。
 だが当然ながら、動けないほどの傷を負っていては魔法は使えない。

「あぁ、それを見越してのコイツだ。あと、エナジーグミも買っておいた」

 エナジーグミは服用型回復薬の一種。
 口に入れた瞬間に意識を取り戻し、傷を癒すという優れものである。
 行商人がモンスターに襲われることも珍しくない昨今、護衛役の傭兵が持っていることが多い。
 故に価格も安く、気軽に手に入れることが出来る。
 何故グミかというと、誰の口にも馴染むから、という理由がある。
 中には体に降りかけるボトル式のもあるが、こっちは値段が高いのであまり人気ではない。

「グミは基本、悠斗に使う予定だ。回復役はこいつに任せたが、こいつが死んでは元も子もないからな」
「————」
「何だよ?」

 誰がこんな知識を仕込んだのだろう。
 その場にいた淳也以外の一同が、そう思った。
 悠斗も、ここまで彼に旅の知識を教えていたわけではない。
 買っていくものは好きにするべきだ、と言っただけである。

「貴方、旅の才能あるんじゃない?」
「——同感」
「そ、そうか……?」
「うん、きっとそうだよ。あ、僕もアイテム買っておいたよ!」

 淳也がクリスタルとグミを鞄にしまうのと同時に、悠斗も何か自分の鞄を探り始めた。
 やがて、えいっという景気のいい声と共に鞄から出したのは、4個の小さな機械だった。

「それ何だ?」
「えっとね通信機。これでね、登録した機械の番号同士と遠くでお話できるんだよ」

 悠斗はその場にいる全員に、通信機を渡した。
 頭から耳にかけて装着できるものであり、手に持ったりホルダーに入れたりして携行する必要がないコンパクトなものだ。
 充電の寿命も長く、電波が悪くてもクリアな音声が再生されるという、これまた優れものの機械である。
 現実世界で言う、携帯電話と同じ機能を果たすのだろう、と淳也は思った。

「ありがとう、悠斗」

 よくこんな便利なものを見つけれたものだと暁美は感心し、悠斗の頭を撫で始めた。
 撫でられた悠斗は一瞬で頬を紅潮させ、視線を暁美から逸らした。

 ————その瞬間。

「はぁ!」
「っ!?」

 突然淳也が、一瞬で闇の粒子を集めて鎌を作り上げ、背後を振り向くと同時にそれを振り上げた。
 驚く一同。目線の先では、胴体を斜めに斬られて真っ二つになった犬の屍が転がっていた。
 ぶつ切りにされた犬の中からは、胃や腸などの内臓が出てきて、血や胃液などの液体も漏れ出している。

「おっと、やるねぇ雑魚の分際で」
「おい。調教が足りてないぞ、このへタレ野郎」
「言ってくれるじゃねぇかこのクソ餓鬼……」

 いつの間にか、淳也の目の前には黒服のフードに身を包んだ、非常に胡散臭い男が立っていた。