複雑・ファジー小説

Re: 常闇の魔法青年-Twilight of Anima-キャラ求 ( No.14 )
日時: 2014/06/29 11:34
名前: 紅 (ID: gOBbXtG8)
参照: 二話〜男の弱点〜

 その後、会話で平和に物事の解決が行くかと思いきや、実際はそうではなかった。
 暁美の冷徹で正直な口調が災いし、ハザマと名乗った男の堪忍袋の緒が切れてしまったらしい。
 そうして現在、暁美とハザマが一騎打ちを繰り広げている。

「あいつ、なかなかやるな」
「でもまだ、淳也くんよりは弱いんじゃないかなー……?」
「——同感」
「そ、そうなのか?」

 一方で淳也たちだが、彼らは少し遠くで一騎打ちを傍観していた。
 何故傍観しているのかというと、それはほんの数十秒前に遡る。
 暁美の挑発に乗ったハザマは彼女に襲い掛かったのだが、暁美が放った閃光による目晦ましに返り討ちに遭った。
 彼が怯んでいる間に暁美は小太刀を光の粒子から作り上げ、臨戦態勢に入る。
 するとハザマは自ら一騎打ちを望んで、そうして今に至るのだ。
 だが、ハザマに勝ち目はない。何故かというと、ハザマはどうも魔法が使えないらしい。
 魔法を使える者と使えない者とでは、戦力の差が非常に大きくなり、ゆくゆくは後者が不利になる。
 例え幼い子供でも魔法が使えれば、魔法を使えない大の男を圧倒できるくらい、魔法という存在は大きい。

 今でも、暁美が放つ攻撃にハザマは対応し切れていない。

「あら、もう終わりなの? つまらないわね」
「うぐっ……!」

 やがて体力が尽きたらしいハザマは、その場に仰向けになって倒れた。
 すると彼は暁美に股間を踏み潰され、悲痛なうめき声を上げると同時に意識を失ってしまった。
 淳也と悠斗はその様を、表情を大きく歪めて見ていた。
 股間を踏まれた、或いは蹴られたときのあの痛み。これは男子にしか分からないというものである。
 この時ばかりは、2人はちょっとだけハザマに同情した。さぞ痛かっただろう、と。

 暁美はそんな2人がそう思ってるとも知らず、微笑みながら彼らを振り向いた。

「男の弱点なんて高が知れてるわ。貴方達も、精々気をつけることね」
「は、はい!」

 淳也と悠斗の声が重なる。
 暁美の目が笑っていないことに、本能的な恐怖感を刻まれたらしい。
 もし何かやらかせば、本当にああいう風になるかも知れない。

「——ところで」
「うん?」

 ふと、静観していた沙那がハザマに歩み寄った。

「この人、誰」

 そういうと、彼女はハザマの持ち物を弄り(まさぐり)はじめた。
 何か証明書のようなものはないかと、ポケットを1つずつチェックしていく。
 だが、目ぼしいものは見つからなかった。手に入ったのは、金と複数の鍵のみ。

「これだけじゃ、流石に正体は分からないね」
「あぁ。こいつの正体は気になるところだが、今はオーブを目指そう」
「えぇ、そうしましょ」

 そういって、一同がその場を離れようとしたときだった。

「ぅあ!」
「な、おい!」

 突然の衝撃波と共に、沙那が吹き飛んだ。
 咄嗟に淳也は闇の魔法を放ち、吹き飛ばされた沙那の落下速度を遅める。
 彼が沙那を救出している間、暁美は周囲の警戒を開始。目つきがさらに鋭くなる。

「一体何よ……」
「僕、沙那さん見てくるね」
「頼んだわよ」

 悠斗は淳也とバトンタッチし、淳也も周囲の警戒を始める。

「っ……」

 やがて、暁美は目撃した。淳也も直ぐに目撃できた。
 沙那が負った傷を癒している悠斗も、意識が朦朧としかけている当の沙那も、気配で直ぐに分かった。

 上空に、古代に生きた巨龍がいるという事実を。