複雑・ファジー小説

Re: 常闇の魔法青年-Twilight of Anima-キャラ求 ( No.17 )
日時: 2014/07/05 17:37
名前: 紅 (ID: gOBbXtG8)
参照: 三章一話〜溌剌少女はトラブルメーカー〜

 レグナートが動かなくなったのを確認してホッとしていると、淳也は聞き覚えのある声を耳にした。
 それは同時に、聞きたくない声でもあった。

「あっれ? 淳也じゃん!」
「やっぱりお前か、真菰」

 真菰と呼ばれた少女は、淳也が通っている学校と同じ制服を着ている。
 着崩した制服の上からはパーカーを羽織っており、その容姿は一目見るだけで溌剌としたイメージを相手に与えることだろう。
 そんな真菰は淳也に近付き、特徴的な八重歯を見せて笑った。

「何だ、こっちの世界へ戻ってたのか」
「そうだよ。たまにはこっちに来たいからさ〜って、あれ? 淳也って何でこの世界にいるの?」
「つい最近、だ」
「へ、へぇ」

 いまひとつ腑に落ちない様子の真菰に、淳也は掻い摘んで今までの経緯を説明して暁美たちを紹介した。


   ◇ ◇ ◇


 真菰が淳也の元にやってきたその後、彼女は成り行きで淳也達の旅に同行することとなった。
 暁美や悠斗は歓迎しているようだが、淳也はそんな2人の一方で苦い顔をしていた。
 淳也は知っているのだ。真菰が関わってきたら最後、様々な面倒事に対して事故を起こしに行かねばならなくなる事を。
 現実世界でもそうだったが、彼女はムードメーカーであると同時にトラブルメーカーでもある。
 淳也は直接彼女と関わっていたわけではないが、彼は影で色々と苦労してきた友達の話を聞いてきた。
 故に、どうしても苦い顔をしてしまうのである。
 元々面倒事が人一倍嫌いな彼にとって、トラブルメーカーは最早天敵とも言える存在なのだから。
 因みに、彼女と淳也の関係は顔見知り程度。特に友達というわけでもない。

 一行はユルング遺跡へ向かう前に、近くの町で休息を取ることにした。
 だがすぐに休息が取れるわけではなかったらしい。門に入るなり、彼らは長い行列の最後尾につくこととなる。

「何だ? この行列」
「あぁ、これね」
「知ってるのか? 暁美」

 溜息交じりに言葉を発した暁美。
 見れば目は半開きになっていて、何か知っているかのような表情をしている。
 淳也が問うが、彼女は中々口を開かない。

「何だよ、もったいぶるなよ」
「もったいぶってるわけじゃないんだけどね……」

 一行が入ろうとしている町の名を"スレイン"という。
 スレインはそこいらの城下町よりも大きな町であり、様々な商人や旅人が多く訪れることで有名。
 その分警備体制も厳しく、身体検査を受けねばならないのである。
 特に最近では、ダークホースとも言うべきとある怪盗が町を騒がせている。
 警備体制は今まで以上に厳しいものとなった。

 それを聞いた淳也は思わず溜息をついた。
 だが、今回ばかりは悠斗や真菰も溜息をついていた。
 沙那は表情こそ変えていないが、内心では面倒だと思っている。

「あーもー! めんどくさいから強行突破しようよ! 真菰ちゃん先に行くからね!」

 すると真菰が突然、淳也の横を突っ走っていった。
 嫌な予感がしたので追うのはやめようと思った彼だが、今この場で彼女のブレーキ役となれるのは恐らく彼だけである。
 仕方なく淳也は暁美たちに「ここにいろ」と一言だけ言うと、彼女の後を追った。
 が、既に遅かったらしい。

「門番さん! はやくとおしてよ!」
「お、お譲ちゃん! 順番守って!」

 早速、真菰が門番と取っ組み合っている。
 とりあえず淳也は闇魔法で彼女の動きを止め、首根っこを右手で掴んでから門番に頭を下げた。

「すみません、コイツが迷惑を……」
「いいよいいよ! 元気な子でいいねぇ! じゃ、ちゃんと順番は守れよ!」
「は、はい」

 どうやら門番は気さくな人だったらしく、救われたな、と淳也は心から思うのであった。
 そして闇魔法を解除し、首根っこを掴んだまま真菰を持ち、彼は暁美たちの元へと戻る。

「——お疲れ」
「あぁ、ホントにやれやれだ」

 沙那の言葉も、今ばかりは救いであった。