複雑・ファジー小説
- Re: 常闇の魔法青年-Twilight of Anima-お知らせ ( No.25 )
- 日時: 2014/07/12 15:34
- 名前: 紅 (ID: gOBbXtG8)
- 参照: 四話〜髑髏男と短パン少年〜
「はぁ……」
暁美は宿を出てから、もう何度目か分からないくらいついた溜息をまたついた。
先刻の事である。
暁美が水を飲むために夜に起きたら、布団から淳也の姿が消えていたという事実に気付いて彼女は慌てた。
そうして夜でも賑やかいスレインの町を歩き回り、淳也を探しているのだ。
もう宿に帰ろうと思い、踵を返そうとした時。
不意に低い声が暁美の鼓膜を揺らした。
「おーい、お譲ちゃん」
振り返ると、そこにはかなり奇抜な恰好の男がいた。
高身長で体格がよく、白に近い金髪が目を惹く。
だが何よりの特徴は、髑髏をあしらった数々の装飾と黒いマントである。
暁美は一瞬、その姿を捉えるなり光の魔法を放ちそうになったが、何とか抑えた。
「何?」
「何? ではない。こんな夜中に幾らスレインの町だからって、夜道の一人歩きは危険だ。さあ、帰るんだ」
正義のヒーローとは真逆の容姿をしているが、これでもどうやら、口振りからして正義を志しているらしい。
「元よりそうするつもりよ。貴方にとやかく言われる筋合いはないわ」
「おー、怖いねぇ……」
その後に"闇野髑髏"と名乗ったその男は、両手を上げたまま後退していった。
◇ ◇ ◇
いなくなった淳也を心配していたのは、何も暁美だけではない。
沙那もまた、彼女と同じように街中を歩き回って彼を探していた。
因みに暁美と沙那の2人だが、真菰がいなくなったことに関しては心配していないとのこと。
「——」
無言のまま町を歩く沙那。
たまに寄り道をしては、気になった店の中を覗いている。
果たして、彼女に淳也を探す気は本当にあるのだろうか。
「おーい、お姉さーん!」
すると、沙那は幼い少年の声に呼ばれた気がして背後を振り返った。
気付けば人気(ひとけ)が少なくなっていたこの頃、走ってくる短パンの少年以外に人はいない。
その少年は"山神春樹"と名乗ると、一枚のポスターを沙那に見せた。
「この人、最近見た?」
ポスターは指名手配書だった。
懸賞金4億9000万円と書かれている下には"怪盗ナイン"と書かれている。
人物像は正に怪盗。青いシルクハットとタキシードに身を包んでおり、手袋をしている。
だが沙那には心当たりがなかった。
「ない」
「マジかよ〜……まあいいや、ありがとうございます!」
春樹は走っていった。
一応、沙那はナインという怪盗の存在を改めて警戒することにした。
手配書が出ている以上、相当な腕前を持っているに違いない。
沙那は宿に帰ることにした。