複雑・ファジー小説
- Re: 常闇の魔法青年-Twilight of Anima-キャラ求 ( No.8 )
- 日時: 2014/06/28 16:51
- 名前: 紅 (ID: gOBbXtG8)
- 参照: 二話〜ありがとう〜
現実世界を〈地球〉と呼ぶように、魔法で創られた世界は〈ルミナシア〉と呼ばれている。
ルミナシアとは現実世界のパラレルワールドのようなものであり、その意味は〈魔法大地〉となる。
パラレルなだけあってか、魔法があるという点以外では、ルミナシアは現実世界とほぼあまり変わりがない。
違ってくる点は、世界中を見ても独自の言語を含んだ日本語だけが話されていること。
ルミナシアでは独自の言語を含んだ日本語を、フォニック語と呼んでいる。
ルミナシアという単語も、元はフォニック語という語彙の中にある独自の言語になるのだ。
そしてルミナシアの全ては〈マナ〉という万象の根源から成っている。
この世に存在するあらゆる物質に非物質。全てはそのマナから成っており、魔法の源もマナから成る。
今ルミナシアは、そのマナの均衡が崩れてきているのだという。
淳也はこの話を暁美から聞かされ、何ともいえない気分になった。
「マナの均衡が崩れる。ルミナシアにおいて、この意味が何を表すのか分かるかしら?」
「——この世界の全てが危ういと?」
「その通り」
万象の源となるマナが崩れれば、言わずもがなルミナシアは危機に陥る。
場合によれば、この世界そのものの崩壊や消失でさえもありうることなのだ。
「そうか……それで? お前は俺に世界を救えって言ったな。具体的に何をすればいいんだ?」
「————」
「——何だ」
「覚悟はあるのかしら?」
「は?」
黙り込んだ暁美の目つきが、また変わったことに淳也は気付いた。
先ほどとは違い、何かを知っている。そんな目をしている。
「世界を救うとなれば、当然私達は旅をすることになるわ。旅とは過酷で辛いもの。それでも覚悟は良いの?」
しばらく目線が交錯する。
その後真剣な暁美のその言葉を聞いた瞬間、淳也は思わず笑い出した。
「……ははっ」
「な、何よ」
こっちは真剣なんだ。そう目で訴える暁美を他所に、今度は淳也が空を見上げて話し始めた。
「変なところでお人よしになるな。世界が終わる危機を聞かされて、黙ってるヤツがいるかよ?」
「————」
「それに、お前はどうせ俺が拒否したら1人で旅するんだろ。お前1人で旅とか、勘弁してくれよ? 女子1人にだけ大きな宿命負わせて、俺だけのうのうとのんびり暮らしてるとか、そんなの胸糞悪いに決まってる」
淳也の言葉をを聞いた暁美は、表情を仮面のような無表情へと転じさせた。
呆れたのか嬉しいのか、それでも瞳の奥に様々な感情を残しながら、彼女は鞄の中をがさごそと探り始めた。
淳也が何をしているのかと見ている中で、やがて目当てのものを取り出すと、それを淳也に握らせる。
握らされたものは、5枚の1万円札。
「旅について来るのなら、それを貴方にあげるわ。さっさ旅支度を済ませてきなさい。町の入り口で待ってるわ」
「あ? あ、あぁ……」
いきなり大金を渡されて戸惑う淳也を他所に、暁美はベンチから立ち上がって歩き出した。
途中、不意にその足が止まる。暁美は背中を淳也に見せたまま、目線を合わせない程度に振り返った。
頬を伝う、一筋の涙を光らせながら。
「……ありがとう」
やがて淳也には聞こえない声でそう言い残すと、暁美はその場を去っていった。