複雑・ファジー小説

Re: ××異能探偵社×× 【5/20更新】オリキャラ募集〆切。 ( No.62 )
日時: 2014/08/24 17:51
名前: るみね (ID: 8hBaEaJR)

    第陸話_弐 



 あの日。

 小鳥遊家の屋敷の惨劇から逃げ出して路頭に迷っていた日。




 はじめて鷹人さんにあった日、あのチンピラに絡まれた時。
 突然腕を掴まれてこういわれた。


__弱い物虐めは駄目だと思うよ。





 あの時はチンピラから俺を守ってくれたんだと思ってた(まぁ、百円玉でそれどころじゃなかったけど……

 でも違うんだ。



 あれは、あの男達に言ったわけじゃない。それなら男達の腕を掴んで止めるべきだ。
 でも鷹人さんは俺の手を掴んで俺に向かっていった。

 弱い物虐めは駄目だって。



      、、、、、、、、、、、、、、、、、
_____お前無意識のうちに殺そうとしただろ?


 

 その時から鷹人さんは俺の異質に気づいていたのかもしれない。


 内に怪物を飼ってる俺を……。
 もしかしたら、それで探偵社で働かせてくれたのかもしれない



 皆良い人たちだったよな……


     多少荒っぽいとこあるけど……





   この人たちといたいのになぁ





 けど。









        ……もうこれ以上かかわっちゃいけないんだ。 



 脳内で櫻が見て来た凄惨な光景までがフラッシュバックされる。







   ……これ以上探偵社を巻き込むな。











「これ以上、俺に関わらないでくださいよ。今度は殺しますよ?」

「桃矢?」
 創平が不安そうに声をかけて近づいた。
「お前、なに言って……」

「だからうっせぇって!」



 言葉のでない鷹人達の一方で禅十郎は満足そうに笑うと花になにかを言った。

「行きましょう。黒尾さん」
 桃矢は表情を隠すように廊下の反対側へ歩いていった。

「じゃあな、異能探偵社の諸君」
「黒尾____!」
 創平が追おうとしたが不意に顔に当たった冷たい物体に驚いて足を止める。
「水?」
 天井を見上げるとなにやら黒い靄が立ちこめていた。そしてすぐに屋内とは信じられない雨が降って来た。視界と動きすら鈍らせる。


「雨……」
「相手の異能?」
 潤が目を細めた。
 しかし単なる雨。まだ当麻医院の敷地内であろうし追いかける事も出来るがそれを鷹人が止めた。
「これから夜だ。下手に追いかけるのは自殺行為だぞ」
 たしかに外も雨が本格化している上に日の入り時間も過ぎている。

「紅魅さん、”五里霧中”で追跡は___」
「雨になったら無理」
 創平のアイデアも紅魅に切られた。
「太一」
 牡丹が黙っている太一に顔を向けた。





 一方で禅十郎の元に見計らったかのように赤毛の青年が現れた。
「よぉ、悠真」
「あ、もう帰りますか?」
 無邪気な笑顔を浮かべる瀬良悠真に禅十郎は手で答える。
「……首尾は?」
「ちゃんと殺しときましたよ?あの裏切り者。弟のほうどうします?」
「……ほっとけ。それより路佑起こしてこい」
 そう言うと背後の”影鬼”が掴んでいる男を指差した。大地に気絶させられていた路佑だ。
「はいはぁーい」
 そう言うと倒れていた路佑を思いっきり蹴っ飛ばす。
「……痛いだろぉが」
 少しのタイムラグののちに路佑が抗議の声をあげた。
「あ、すいません!死んだかと思ってました」
 悠真が切った腕のロープを引きちぎりながら路佑はよろっと立ち上がった。

「あんなトドメもささないような甘い奴に殺されてたまるか……」
「その割にはボロボロですね」
「……」
 無言だがカチンと来たのか路佑の腕に力がこもる。同時に悠真の周囲で風が唸る。が、
「やめろ」
 禅十郎の静かな声に二人は動きを止めるとしぶしぶ大人しく歩き始めた。
「花、追っ手は?」
「来てないよぉ♪」
「花ちゃんの”雨”だけじゃなくホントにふって来てますから、追跡は無理ですよ」
 もう病院の敷地を離れているが相変わらず雨は激しく、日も暮れて来たために街灯の無いあたりはとても薄暗い。


「油断すんな。探偵社はそう甘くねぇよ」
 そう言うと空中の何かを手に掴んだ。
「何ですか?」
 悠真が首を傾げた。

「ん、ただのシロアリだよ」
 そう言うと手の中の”虫”を潰した。










________________ブチッ!!



 唐突の暗転とそこから全身に走った激痛に太一は顔を歪めた。
「ッ…………」
 その様子で太一の”揺光”が潰された事を悟る。

「太一のもだめか……」
 潤が残念そうにため息をついた。
「お手上げね」

「とりあえず、太一さんはいったん休んだ方が」
 創平が言うが反応がないので振り返る。
「太一さん?」
「太一、どうした。大丈夫か?」
「……ゆるさねぇ」
「は?」
「あの野郎、シロアリって言いやがった!」
「あぁ……」
「こいつは俺の相棒の”揺光”であって断じてシロアリなんかじゃねぇ!」
「太一?」
「絶対殺す!」
 数分荒れた後、
「太一、落ち着きなよ」
 紅魅に諭されてようやく落ち着いた。

「とにかく今はこの状況の撤去が先だろ」
 降って湧いたような声に七瀬が真っ先に反応した。
 そこにはボロボロの白衣を着た当麻が立っていた。
「先生!何処言ってたんですか、この非常事態に!!!【亡霊】の奴らが来て_______患者さんも皆も______
 後半部分はなき声に混じって何を言っているのか分からなかった。

「…………悪かったな」
 七瀬を優しく抱きしめると頭をなでた。
 仮にも医院で働く物として、目の前で患者や同僚を傷つけられる事がどれだけ辛い事だったか____

「当麻先生、どこにいたんですか」
「あの野郎に鉢合わせして”影”に捕まってたんだよ。おかげで助けられた命も助けられなかった……」
 言葉に込められた殺気に探偵社の面々の背中の毛が立った。


「で、桃矢は禅十郎と一緒にいったって訳か?」
 鷹人が黙ってコクッと頷いた。

「……まぁ、とりあえず手伝え。そこの無茶した馬鹿は診るから来い」

 苦笑する大地も頷き、その言葉でおのおのが動き出した。





 相変わらず雨は上がらなかった。