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「ファーン家の王様っ……？！ そんなっ……。ファーン家は私以外みんな死んじゃったはずじゃ…………」

キリがかすれた声をあげる。イズミは宙を見つめて、それからキリに視線を絡めた。

「キリさん……」
「…………。イズミさん、私——」

キリはぐっと唇を噛み締めて、ふるふると頭を振った。


「ファーン家の長女として、その【王様】の正体を、必ず突き止めてみせるよ！」

拳とともに、それは大きな決心を固めるのであった——

そんな中、それらの話を扉越しに聞いていた人物がいた。
イズミの容態が気になってやってきた、リークであった。
私服から軍服に着替え、その表情はいつも以上に硬かった。
頑丈な両扉にもたれかかって、腕組みをしながら聞き耳を立てていたリークは、

「【ファーン家の王様】……？」

眉をしかめて、反芻する。
その胸に、ふと過よぎるものがあった。

「まさか……。……んなわけないよな」

フッと前髪を息で浮かせ、伏せていた顔を上げると、

「……あの、中に入らないんですか？」
「…………」

目の前に、見知った顔の女性が、困惑した様子で佇んでいた。