複雑・ファジー小説

Re: 妖退治屋 いざよい ( No.14 )
日時: 2014/08/17 17:22
名前: 蜂蜜 (ID: NihAc8QE)

:其の九:なぎなた


「ひゅあーん、空様なんで起きないのぉ!」

戦闘によって折れてしまったなぎなたは、部屋の一段高くなった場所に丁寧に置かれている。
そこに影が差す、午後のおだやかな時間。
部屋の中央にしかれた布団に、空は横たわっていた。

あの日から数日。
屋敷の修復も終わり、妖怪退治の仕事依頼もない。ごく平和な時間が過ぎていった。
ただ、空が目を覚まさない事をのぞいては、だが。
何も口にしていないのだから、空の体は弱り切っているだろう。

空が見つかったのはあの光の中心と思われる場所だった。
町を飲み込んだ白い光。一瞬にして、町の妖気が消し飛んだこと。
関連は少なからずあるだろう。

水華はぐしゃぐしゃとあたまをかき回すと、ぽすんと布団に上半身を投げ出した。

「あー、もう、こんなときにかぎって馬鹿犬はいないんですからー。ホント使えないですねあいつ・・・」

斑毛は昨日の朝、なぎなたの破片をくわえてどこかへ言ってしまったのだ。
どこへ行くのかも、
いつ帰ってくるのかも、
なぜ破片を持って行くのかも、
何も教えずに。

「どこに行ったんでしょー・・・」

水華は誰に答えてもらうでも無い質問をはき出した。行き場の無いため息もあとを追った。


『斑毛兄さんならこっちにいるよ。俺といっしょ。あ、俺敵じゃ無いからね、兄さんの後輩だからね』


少しかすれた、聞いていると安心するような声に、水華はビクッと体を震わせた。
あたりを警戒するように見回し、毛を逆立てる。
そんな水華の様子には声の主は臆さないようだった。

『俺、千寿丸ってぇ言います。この状態疲れるんで、そこの空さんにとりつくよ〜」

勝手に話を進める千寿丸に、水華はぽかんと口を開けた。
そしてむくりと起き上がった空に、さらに口を大きく開けた。

「どうです?すごいでしょ、移し身の術魂版。・・・それよりもこの体すっごい弱ってんね。そういや兄さんそう言ってたっけ」

空に宿った千寿丸は人なつこそうににっこり笑った。

「説明の前に、この体の栄養補給といこうか。こんなんじゃ山登りなんて自害同然だから。」

わけが分からず毛を逆立て続ける水華に、千寿丸は言った。