複雑・ファジー小説

Re: 妖退治屋 いざよい ( No.15 )
日時: 2014/08/23 20:51
名前: 蜂蜜 (ID: NihAc8QE)


:其の拾:なぎなた


まだまだ暑い秋の初め。
町は妖出現の気配も感じられず、ごくごく平和な風がながれていた。

———しかし。

「教えなさい!あなたの全てっ。あの犬っころの後輩なんて信じられません!」
「えええ!?兄さん信用されなさ過ぎ!」
「空様の姿で、空様の声でしゃべるのも気に入らないー!」

水華は小さく、まあ空様の笑った顔が頻繁に拝めるのはいいけど、と付け加えた。
千寿丸は困ったようにクスクス笑い、手元の米をまたほおばった。

「うーんとね、あのなぎなたは俺の師匠が作ったの。だから、治せるの師匠しかいないんだよ」

先ほどからの話をまとめると、
[斑毛は空のなぎなたを造った千寿丸の師匠のもとにいる。空はまだ起きられる状態ではないので、山にいる千寿丸の師匠のもとへ行くまで、千寿丸が空の体へおじゃましている]

「・・・お邪魔しているじゃないですよ!?なんで斑毛と一緒に行けなかったんですかっ」
「あれあれ、もしかして一緒にいきたかったぁ?そぉ。ふふふ・・・」
「んなっ・・・そんなんじゃないですー!ていうか空様の体でそんな顔するなー!!」



一方、龍霊山——斑毛のいる山——では、木々に囲まれた一件の家の前で、ぐるぐる周りながら待っていた。

「あー、わしの刀こんなにしやがってのう!なんなのじゃ十六夜の女って。ここに持ち込んだのもう数え切れないぞ。性格荒いんじゃないの。どうなのじゃ」
「いいじゃないの師匠ー。昔のよしみってことで」
「師匠には敬語をつかえっ」
「『もと』師匠だろ」

家の扉が開き、白い羽織を着た少年が出てきた。見かけ、年は十ほどの小さな子に見える。
それが、斑毛のところへたったったっとかけてゆき、にたりと笑って言った。

「上下関係はそうそうきれぬものだぞ?絆である師弟関係も、妖術と封印の産物の主従関係も、な」

それより、と少年は続ける。

「あやつらはなにをもたもたしておるのだ。」
「・・・三里を数秒で駆け抜ける人間とくらべられちゃぁなぁ・・・」

斑毛は深くため息をついた。